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日外会誌. 109(1): 15-20, 2008


特集

食道癌治療―最近の動向―

4.化学放射線療法

愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部

室 圭

I.内容要旨
近年,わが国において根治的化学放射線療法の有効性が明らかとなり,手術療法のオプションとしての地位は確立したといえる.しかしながら,「手術と同等の治療成績が得られ手術療法に取って代わり得るのではないか」と騒がれた開発当初の勢いはだいぶトーンダウンした感がある.これは多施設共同の第II相臨床試験として行われたJCOG 9906を筆頭に各施設での化学放射線療法の長期治療成績がつまびらかになり,その限界や問題点が明らかになってきたからであろう.特に化学放射線療法後の遺残·再発例に対して,現状ではSalvage surgeryの力を借りてはじめて手術療法に近い治療成績が得られることがわかるに至り,「それみたことか,手術療法こそが唯一の根治治療法であり標準治療なのだ」外科医の多くはそう感じているかもしれない.化学放射線療法に携わるオンコロジストはその実態と状況を真摯に受け止める必要があるだろう.しかし,本療法は,少なくともわが国では,まだ緒に就いたばかりの発展途上の治療法であること,現時点で手術に若干劣るものの良好な治療成績と食道温存が得られることにおいて,極めて魅力的な治療法であることは紛れもない事実である.今後,化学放射線療法の強み·利点を活かして,弱点·問題点をきちんと把握·解析·克服して,治療法としてBrush upしていく地道な努力が必要である.

キーワード
化学放射線療法, JCOG 9906, CR(Complete Response), Salvage Surgery, 晩期毒性


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