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日外会誌. 109(1): 10-14, 2008


特集

食道癌治療―最近の動向―

3.内視鏡的治療

東海大学 消化器外科

島田 英雄 , 幕内 博康 , 千野 修 , 西 隆之 , 木勢 佳史 , 葉梨 智子 , 山本 壮一郎 , 原 正

I.内容要旨
食道癌に対する内視鏡的治療は内視鏡的切除(endoscopic resection:ER)として内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(endosopic submucosal dissection:ESD)が施行されている.内視鏡的治療は局所治療であるため,リンパ節転移の無い症例であることが大前提となる.リンパ節転移の頻度に関しては,食道癌表在癌の外科切除例の検討より壁深達度とリンパ節転移の関係が明らかにされている.癌腫が粘膜固有層にとどまる病巣ではリンパ節転移の可能性は極めてまれであり,絶対適応とされている.ERは何よりも食道温存を可能にした低侵襲治療であり,切除標本の病理組織学検査ができることが利点である.代表的なEMRの手技は(1)EEMR(Endoscopic esophageal mucosa resection)-tube法,(2)EMR-C法(EMR using a cap fitted panendoscpe)(3)2チャンネル法である.一括切除が困難な大きな病巣に対しては分割切除が行われて来た.今日,早期胃癌に対するERで劇的に普及したESDが食道領域にも応用され一括切除が行われるようになってきた.現況ではEMRとESDの治療難易度,術者技量,所要時間,医療経済面等を比較すると全例がESDの適応とは言いがたく,使い分けが必要と思われた.ERの適応拡大に関してはリンパ節転移のないSM1までの症例に対し行われてきた.しかし,現況のリンパ節転移診断の限界を考慮し,切除標本の病理組織検索と患者リスクを十分に評価し適切な追加治療が検討されている.

キーワード
食道早期癌, 内視鏡的治療, EMR, ESD, リンパ節転移


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