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日外会誌. 108(4): 206-210, 2007


外科学会会員のための企画

Bacterial translocation

Bacterial translocationの対策 
(1)栄養管理を中心に

帝京大学 外科

福島 亮治

I.内容要旨
Bacterial translocation(BT)の対策としての栄養管理は,まずは腸管を使用した栄養法である.動物実験でTPNを行うと明らかにBTが促進されることが種々報告されており,開腹手術患者の検討でもBTとTPN(完全静脈栄養)の関連性が最近の研究で示唆されている.また,BTは侵襲後かなり早い時期から起こることが動物実験でわかっており,侵襲後の早期経腸栄養が重要と考えられている.一方,経腸的にTPNの輸液製剤やElemental dietを投与してもBTが促進されることから,経腸的な栄養投与とともに,食物のBulkや食物繊維の重要性も指摘されている.
BTを防止する特別な栄養素としては,グルタミン,アルギニンが注目され,他にω-3系不飽和脂肪酸,核酸,probioticsなどにも期待がよせられているが,特にアルギニンは状況により相反する結果が報告されている.
BT対策としての栄養管理法は,動物実験で明確な効果が報告されており,臨床的にも感染症の低減や在院日数の低下に効果があることが示唆されている.しかし,臨床的効果がBTと直接関連しているかについては,ほとんど検討がなされていない.

キーワード
GALT(gut associated lymphoid tissue), 経腸栄養, TPN(total parenteral nutrition), 食物繊維, probiotics


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