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日外会誌. 107(1): 9-14, 2006


特集

虚血性心疾患治療の新展開

3OPCABOff-Pump Coronary Artery Bypass)の現状

国立循環器病センター 心臓血管外科

小林 順二郎

I.内容要旨
冠動脈バイパス術(CABG)は,本邦においても年間2万例以上行われるようになってきたが,患者の重症化や高齢化により,脳梗塞・縦隔炎等の術後合併症をきたす危険性の高い患者が増加している.これらの症例に対して,人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス手術(Off-Pump Coronary Artery Bypass Grafting:OPCAB)が本邦でも広く行われ,2004年には60%を越えるに至っている.また,カテーテル治療において,薬剤溶出ステントが広く使用されるようになり,再狭窄率が低下したことから,CABGの長期予後をさらに良好にするために,動脈グラフトを多用したOPCABあるいはすべてのグラフトに動脈を使用するCABGが増加している.2004年においては,動脈グラフトが76%も使用され,動脈グラフトのみのCABGは全体で52%,OPCABでは66%とさらに高い.また,大動脈を部分遮断することによる脳梗塞を避けるために,グラフトの自動吻合器や中枢吻合支援装置が広く使用されている.革新的CABGとしては,低侵襲を目指した内視鏡や手術支援ロボットシステムを使用したCABGが行われ,局所麻酔と硬膜外麻酔を併用し,気管挿管を行わず覚醒した患者に対するCABGも行われるようになっている.

キーワード
冠動脈バイパス手術, 人工心肺, 低侵襲手術


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