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日外会誌. 107(1): 3-8, 2006


特集

虚血性心疾患治療の新展開

2PCIの現況

倉敷中央病院 循環器内科

光藤 和明

I.内容要旨
PCIの歴史の中で最も長い期間解決できなかった大きな問題である再狭窄の問題が薬剤溶出性ステント(DES)によって解決されようとしている.無作為比較試験では単純な病変を対象としたRAVEL試験において再狭窄率は0%であった.より実世界の病変を対象としたSIRIUS試験においては8.9%と若干高く,特に近位部エッジの再狭窄率が5.8%であった.しかし留置時にエッジの傷害を避けるようにした試験では,近位部エッジの再狭窄率を2.1%まで低下することが出来た.再狭窄の問題はかなりの程度まで解決されたと言ってよい.
再狭窄率の劇的な低下によってこれまでは再狭窄が主たる問題であったような病変に対してはPCIの適応が広がっている.瀰漫性病変,小血管,分岐部病変,慢性完全閉塞病変,ステント再狭窄病変,左主幹部病変の一部である.いずれの病変群においてもDESのBMSに対する優位性が報告されている.
今のところ特に証拠はないがDESに関してはステント血栓症の頻度が高いかも知れない.血栓症はひとたび発生すると致死率が高いために十分な期間の抗血小板薬の投与が必要とされる.
日本においてはクロピドグレルが承認される前にDESが導入されたために血栓症の発生率が高いことが懸念されたがj-Cypher試験においてはその発生率は諸外国に比して低いレベルであり,今のところ同等の安全性をもって使用可能と考えられる.
しかしDESを含めてPCIが冠動脈疾患の生命予後を改善しているという証拠は今のところ無い.多枝疾患対するCABGとの比較において,BMSでは糖尿病患者をのぞいては両者に生命予後の差がないとされてきたが,ARTSII試験では1年後においてはDESの方がCABGに勝るとの結果であった.更に実世界に近い症例群での更に長期の比較試験の結果が待たれる.

キーワード
冠動脈インターベンション(PCI), 薬剤溶出性ステント(DES), シロリマス溶出性ステント(SES), 再狭窄, ステント血栓症


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