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日外会誌. 95(3): 192-199, 1994


原著

温阻血腎障害における末梢血好中球の役割に関する研究

東京大学医科学研究所 外科・移植科
*) 沼津市立病院 

冨川 伸二 , 秋山 暢夫*) , 長尾 桓 , 内田 久則

(1992年10月9日受付)

I.内容要旨
死体腎移植の成績は温阻血腎障害によると思われる急性尿細管壊死 (acutetubular necrosis, ATN) の発生の有無に大きく左右されている.温阻血腎障害の発生に末梢血好中球が関与している可能性について,ラット温阻血腎モデルを用いて検討を試みた.SDラットを4群に分け無処置群 (n=10) を対象とし,好中球を減少させる目的で温阻血腎障害作成の72時間前にcyclophosphamide (CY) 200mg/kgを腹腔内に投与した群をCY群 (n=9) とした. CYの投与に加え好中球を選択的に増加させるといわれるgranulocytecolony-stimulating factor (G-CSF) 50μgを,温阻血腎障害作成の48時間前から12時間毎に計4回連続皮下投与した群をCY+G-CSF群 (n=7) とした.さらに同量のG-CSFのみを投与した群をG-CSF群 (n=6) とした.各群のラットの右腎を摘出し左腎動静脈の血流を60分間遮断して温阻血腎モデルを作成し,血流再開24時間後に採血と採尿を行い各群の腎機能を比較検討した.1) CY群の末梢血好中球数は210±90/mm3で無処置群の1,880±290/mm3に比べ89%減少していた (p<0.01).血流再開24時間後の血清Cr値は無処置群 (4.42±0.37mg/dl) に比べCY群 (2.63±0.29mg/dl; p<0.01) で40%抑制された.2) CY+G-CSF群では末梢血好中球数はCY群に比べ有意に増加しており,血派再開24時間後の腎機能は無処置群と同程度に障害された.3) 無処置群とCY群の計19例について温阻血腎障害作成直前の末梢血好中球数と血流再開24時間後の血清Cr値との問に有意な相関関係 Cr=0.597, p<0.01)が認められた.
以上の結果より,ラット温阻血腎障害の発生に末梢血好中球が深く関与していることが明らかとなった.

キーワード
温阻血腎障害, 腎移植, 好中球, 活性酸素


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