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日外会誌. 91(10): 1591-1595, 1990


原著

核DNAよりみた大腸癌肝転移例 (FCMを用いた検討)

金沢大学 医学部第2外科

山口 明夫 , 石田 哲也 , 西村 元一 , 神野 正博 , 小坂 健夫 , 米村 豊 , 宮崎 逸夫

(1989年9月27日受付)

I.内容要旨
大腸癌肝転移65例において,フローサイトメトリーを用いて肝転移巣および原発巣のDNA ploidy patternを測定し,臨床病理学的所見および予後との関連を検討した.
原発巣52例のDNA ploidy patternはdiploid 48.1%,aneuploid 51.9%,肝転移巣31例ではdiploid 35.5%,aneuploid 64.5%であった.原発巣と肝転移巣でのHeterogeneityは20%にみられた.肝転移程度,転移個数と原発巣DNA ploidy patternの間には相関を認めなかった.肝転移巣の切除が不能であった28例においてその予後をみると,diploid症例の1年及び2年生存率が42.9%,14.3%であったのに対して,aneuploidでは1年生存率21.4%で,全例2年以内に死亡した.
肝転移巣切除例において,転移巣DNA ploidy patternと転移時間,程度,個数には相関がみられなかった.その残肝再発率はdiploidの36.4%に比して,aneuploidでは50%とやや高かった.予後をみてもdiploid症例では5年生存率71.1%と,aneuploid症例の21%に比して有意に良好であった.
以上より,大腸癌肝転移例において,FCMによるDNA ploidy pattemの測定はその予後を推定する指標となり,特に肝転移巣切除可能例において独自の予後判別因子となることが示唆された.

キーワード
大腸癌, 肝転移, Flow cytometry, DNA ploidy pattern

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