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日外会誌. 90(12): 1959-1964, 1989


原著

水浸拘束ストレス下におけるシメチジンの胃粘膜血流低下阻止作用
ーノルアドレナリンとの関連にてー

神戸大学 医学部第1外科(主任:斉藤洋ー教授)

裏川 公章 , 安積 靖友 , 長畑 洋司 , 武田 浩一郎 , 市原 隆夫 , 守友 仁志 , 斉藤 洋一

(1989年1月10日受付)

I.内容要旨
急性潰瘍の発生要因のうち胃粘膜血流の低下は各種の胃防御能の中で最も重要な位置付けがなされている.著者らはcimetidineの水浸拘束ストレス下における胃粘膜血流に及ぼす影響とその機序についてWistar系雄性ラットを用いて検討した.
方法: in vivoの実験系では,① PGE2投与群,② PGI2投与群,③ cimetidine投与群,④無処置の対照群に分け,ストレス負荷前,負荷4時間後の胃粘膜血流量を電解式水素ガスクリアランス法で測定した. in vitroの実験系では摘出胃血管灌流標本を用いノルアドレナリン刺激下でPGE2, I2, cimetidineを投与し灌流圧に及ぼす影響をみた.
結果:ストレス負荷4時間後の胃粘膜血流は対照群の58.0%減に対してPGE2投与群26.9%減,PGI2投与群15.7%減と有意に負荷後の血流低下は抑制され,cimetidine投与群でも39.2%減と対照群よりも有意に抑制された.またin vitroの系でcimetidineを投与すると胃血管泄流圧は最大36.6%の減少を示し,PGE2の44.9%減,PGI2の49.4%減ほど著明ではないもののcimetidineにもノルアドレナリンに拮抗した血管拡張作用の存在することが確認された.
以上の成績よりcimetidineには酸分泌抑制作用以外にストレス負荷後の胃粘膜血流の低下を阻止する作用があり,この機序として胃血管系の拡張も一因と考えられた.

キーワード
cimetidine, PGE2, PGI2, 胃粘膜血流量, 胃血管灌流圧


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