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日外会誌. 90(8): 1196-1204, 1989


原著

胃癌の増殖, 分化と間質の性状に関する免疫組織化学的研究

日本医科大学 第2外科(主任:庄司 佑教授)
日本医科大学 第2病理(指導:浅野伍朗教授)

高橋 望

(1988年9月19日受付)

I.内容要旨
胃癌における間質の特性を知る目的で,胃癌41例,胃異型上皮2例,胃潰瘍3例を対象として,間質構成成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン,フィプロネクチン,IV型コラーゲンの局在を免疫組織化学的に観察し検討した.
胃癌組織にコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの増加がみられた.コンドロイチン4硫酸プロテオグリカンはフィプロネクチンとともに癌周囲間質に豊富に局在し,癌固有の間質形成や癌細胞の増殖,浸潤への関与が示唆された.またコンドロイチン6硫酸プロテオグリカンは非癌部とは異なり,粘膜内に癌が存在する部位の粘膜筋板,癌浸潤部の血管周囲や固有筋層,および癌胞巣周囲に局在を認めた.その局在をみる固有筋層浸潤部ではbromodeoxyuridine(BrdU)が,紡錘形細胞,血管内皮細胞,固有筋層平滑筋細胞に標識され,同部で結合組織が新生されていることが確認された.
このコンドロイチン6硫酸プロテオグリカンの局在は,未分化型癌では分化型癌に比べ顕著にみられた.さらに同部には分化型癌と異なりIV型コラーゲンの密で広範囲な局在が認められ,特に硬癌ではびまん性に局在していた.このIV型コラーゲンは,電顕的に新生毛細血管,筋線維芽細胞,平滑筋細胞周囲に局在がみられた.しかし癌進展先進部では,浸潤進展傾向の強い未分化型癌にはコンドロイチン6硫酸プロテオグリカンの局在を認めず分化型癌と異なっていた.このように組織型,浸潤様式でコンドロイチン6硫酸プロテナグリカン,IV型コラーゲンは異なる局在を示した.
以上,胃癌組織で非癌部とは異なる細胞外基質の増加がみられ,特に硬癌での結合組織増生は癌細胞に誘導された間質変化である可能性が推察された.これら胃癌組織における間質変化は,癌細胞の生物学的特性に依存して誘導された結果であることを示唆している.

キーワード
胃癌, 免疫組織化学, コンドロイチン硫酸プロテオグリカン, フィブロネクチン, IV型コラーゲン


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