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日外会誌. 85(10): 1288-1300, 1984


原著

抗癌剤術前投与による胃癌の臨床病理学的研究

新潟大学 外科学教室第1講座

梨本 篤

(昭和58年12月12日受付)

I.内容要旨
術前化学療法施行胃癌症例130例,145病変について,肉眼形態の変化,組織学的効果を中心に臨床病理学的見地から検討を加え,以下の結論を得た.尚,組織学的判定基準としては,大星・下里分類を用いた.
1) 術前化学療法非施行群378例,418病変(対照群)ではGrade IIA類似の変化は2.2%と低率であり,術前化学療法群にみられるGrade IIA以上の変化は抗癌剤による効果であることが確認された.
2) X線,内視鏡像の肉眼形態変化のみならず,5-FU投与開始後は12日目頃の生検組織像も,癌組織のin vivoでの抗癌剤感受性を判定する上で有効である.
3) 5-FU経口投与では,500mg/日以上,総量5.0g以上で有効例が高率にみられ(p<0.01),抗癌剤起因性胃炎は500mg/日以上,総量6.0g以上に高率に発生した(p<0.005).従つて5-FU500mg/日,総量5.0gが術前投与量として適量と思われる.
4) 胃癌主病巣とリンパ節転移巣に対する組織学的効果は一致する傾向にあった(p<0.01).
5) 肉眼形態の変化を呈した症例の85.7%が組織学的にも有効と判定された.
6)早期胃癌の有効率は38.5%と進行胃癌の29.7%に比して高率であった.
7) 胃壁各層別では,粘膜内の癌細胞に対する有効率は44.8%と粘膜下層以下のそれに比し高率であった.
8) 副作用は23.5%に認められたが重篤なものはなかった.
以上,術前化学療法により,胃癌病巣を破壊し,そのviabilityを低下させるのみならず,使用薬剤に対する腫瘍の感受性をin vivoで容易に判定でき,今後,遠隔成績向上のための一手段と成り得ると考えられた.

キーワード
胃癌術前化学療法, 5-FU経口投与, 生検組織像の経時的変化, 抗癌剤起因性胃炎, 抗癌剤組織学的効果

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