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日外会誌. 84(3): 196-202, 1983


原著

進行癌に対する術後の特異的免疫療法
-腫瘍免疫RNAと腫瘍3 M KCl抽出液の併用-

1) 弘前大学 第1外科
2) 弘前市立病院 外科

福島 松郎1) , 高嶋 一敏1) , 佐藤 守三1) , 山内 誠1) , 橘 正人1) , 川口 忠彦1) , 鯉江 久昭1) , 町田 清朗2)

(昭和57年8月3日受付)

I.内容要旨
基礎研究で腫瘍免疫RNA (I-RNA) で感作したリンパ球の移入と腫瘍3 M KCl抽出液(TA)の能動免疫を併用するとestablished tumorにも抗腫瘍効果が出現する事が著者らにより確められている.これを臨床応用するため, Phase III studyとして各種進行癌の術後に,患者自身の癌組織を用いて作製したI-RNAおよびTAで特異的免疫療法を試みた.即ち, I-RNA感作リンパ球の移入による受動免疫終了後, TAによる能動免疫を併用するもので, 8例の各種進行癌の術後に試み,従来のIRNA感作自家リンパ球移入群(9例),同,同種リンパ球移入群(21例)および無処置リンパ球移入群(8例)のPhase II studyと比較した.本免疫療法施行前後の免疫能の変動では,PPD,PHA皮内反応,T細胞比,PHA幼若化率,NK活性とも四群間に殆んど差がなく,いづれも施行前後の変動は少ない.血清中のIAP,阻止因子,CEA等も四群共殆んど変動がなかつた.然し,特異的免疫反応であるTAの皮内反応はI-RNA感作自家リンパ球で1/4,同,同種リンパ球で1/6,無処置リンパ球では0なのに対し,I-RNA感作リンパ球とTAの併用群では3/7(43%)が陽転し,LAI,LMIの陽転率も第四群で高い傾向があった.
Phase III studyの8例の内訳は消化器癌3例,肺癌2例,その他の癌3例で,根治手術は肺癌の1例のみで他は姑息切除4例,切除不能・再発癌3例で内, 5例に肺転移があった.本療法により客観的腫瘍の縮少を認めたのは3例で,Karnofskyの判定規準で0-C 1例,I-A 1例,I-B 1例となる.滑膜肉腫の1例では本療法施行後,肺転移巣は次第に縮少し, 6カ月後の縮少率は90%となったが7カ月目に新らたなCoin lesionが出現した.この間,他の合併治療は行なわれていない.他の2例についても略述した.

キーワード
術後特異的免疫療法, 腫瘍免疫-RNA, 腫瘍抗原(3 M KCI抽出液)

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