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日外会誌. 82(4): 406-417, 1981
原著
下部直腸癌における癌先進部から外科的剥離面までの最小距離と局所再発
I.内容要旨下部疸腸癌の局所再発の要因を解明する目的で,下部直腸癌60例に上方,側方リンパ節郭清を伴なう根治的直腸切断術を行ない, 主病巣の各部位で癌先進部から外科的剝離面までの距離を組織学的に計測し,その最小値(以下,その症例の「ew」と仮称する)について次の点を明らかにした. 1. 「ew」を規定する原病巣の部位,2. 「ew」と局所再発の関係(術後2年以上経過した37例について).さらに,手術的に切除し得る下部直腸周囲の軟部組織の厚さを行政屍体解剖例(男性5例,女性5例)より明らかにした.
結果: ① 「ew」を規定する部位が癌病巣の肉眼的中心部であったのは40%(24/60)であつた. ②「ew」を規定する部位が癌の壁内浸潤の最も深い部位(壁深達度を規定する部位)であつたのは60%(36/60)であつた.③ 「ew」は局所再発例(12例)が非局所再発例(25例)に比べ有意に短かく(p<0.05),また,「ew」が1mm未満では80%(4/5)に局所再発がみられた.④ 局所再発はpm,a
1の12例ではなく, a
2で42.9%(9/21),a
1で75%(3/4)にみられた.局所再発のなかつたものの「ew」は,a
2の前壁の癌で最小値4mm,後壁の癌で最小値3mm,側壁の癌で最小値2mmであり,街では最小値6mmであった.⑤ 前立腺,腟後壁等の合併部分切除による局所再発防止の効果はa
2については不十分であつた.⑥ 今回の検討では,「ew」が6mm以上のものには1例も局所再発がなく,a
2以上のものの安全域を示すものと考えられた.⑦ 屍体解剖例に骨盤内臓器を一塊として摘出する操作を加え,最大限に手術的に切除可能な直腸周囲の軟部組織の厚さを計測したところ,前壁側では前立腺,腟まで1mm未満と極めて軟部組織が少なく,後壁は6mm前後,側壁は8~10mm前後の軟部組織がみとめられた.このことから,直腸前壁の癌でa
2と考えられるものに対しては積極的に広範かつ十分な他臓器合併切除が根治を得るために必要と考えられた.
キーワード
下部直腸癌, 直腸切断術, 癌先進部, 直腸癌局所再発
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