日外会誌. 126(2): 123, 2025
Editorial
少子高齢化社会における小児外科の行末は?
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弘前大学医学部附属病院 小児外科 平林 健 |
本誌の第126巻1号で「少子化時代のこどもの外科医療のあり方」が取り上げられました.また,先日開催された第40回日本小児外科学会秋季シンポジウム(会長:北里大学田中潔教授)でも「少子化時代における小児外科医育成」が議題に挙げられ,ベテランから若手まで活発な討議が行われましたが,具体的な解決策は得られませんでした.
2003年には日本全体の出生数が1,123,610人でしたが,2023年には727,277人と約65%に減少し,15歳以下の人口も約79%まで減少しています.少子化が急速に進む北日本の過疎県である青森県では,出生数と15歳以下人口が2003年に比べ2023年にはほぼ半減しています.青森県で小児外科医を務める筆者は,小児外科症例数の減少を肌で実感しています.このように少子化が急速に進むと,小児外科医療への需要も急速に縮小し,施設の集約化や効率化(実際には縮小)が避けられなくなると考えられます.青森県でも周産期・小児医療の集約と効率化は喫緊の課題です.
しかし,小児外科医の役割は,新生児や悪性腫瘍,胆道閉鎖などの高度な治療に限らず,鼠径ヘルニア嵌頓や腸重積などの一般的な疾患治療も担い,地域の小児医療を支えています.青森県のような広大で交通が不便な地域では,施設の過度な集約化は地域医療のみならず地域社会の崩壊をも招きかねません.
このまま少子化が続けば,症例数は減少し,小児外科医1人当たりの経験が不足し,日本の小児外科医療の質の維持が難しくなる可能性があります.
集約化が避けられない地方の小児外科医療体制を維持するためには,巡回診療やリモート診療の充実が必要です.また,小児外科医の教育・質の維持には,リモート教育・カンファレンス,VRを活用した希少症例の体験共有(筆者が愛する『スター・トレック』TMのホロデッキのようなもの)も考えられますが,課題は多く残っています.
日本の小児外科医療は,先達の先生方が築かれた日本小児外科学会の専門医制度の成果として,日本全体の質の均てん化は達成されましたが,急激な少子化が小児外科医療の根幹を脅かしています.それでも小児外科医を志す若手は多く,筆者も定年まで残り数年で小児外科の未来に少しでも貢献したいと考えています.
利益相反:なし
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