日外会誌. 125(5): 468-471, 2024
手術のtips and pitfalls
食道胃接合部癌に対する胸腔内再建を考慮した術式
腹腔鏡/左胸腔鏡同時アプローチ（MALTA；MINIMALLY INVASIVE ABDOMINAL AND LEFT THORACIC APPROACH）を併用した食道胃接合部癌手術
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北海道大学大学院医学院・医学研究院消化器外科学教室Ⅱ 海老原 裕磨 , 平野 聡 |
キーワード
食道胃接合部癌, 胸腔内吻合, 胸腔鏡
I．はじめに
当教室では，食道胃接合部癌に対し十分な口側断端を確保した食道切離ならびに良好な術野のもと確実な胸腔内吻合を行うことを目的に腹腔鏡/左胸腔鏡同時アプローチ（Minimally invasive abdominal and left thoracic approach：MALTA）による下部食道・胃切除術を導入している1)
2)．本稿では，MALTAによる胸腔内吻合の手術手技につき解説する．
II．手術手技
1．体位とポート位置
開脚上体右半側臥位（Swing-top体位）にて行う（図1A）．本アプローチ法は胸腔鏡操作と腹腔鏡操作を，術中に体位変換をすることなく，ベッドローテーションのみで迅速に切り替えることが可能となるため（図1B），胸腔操作を必要とする接合部癌に対するアプローチ法として有用である1)．腹部ポート位置は，12mmポートをカメラ用として臍部におき，上腹部に肝圧排用，左右側腹部に術者用を配置している．さらに，左側腹部に5mmポートを配置し助手用として用いている．胸部ポート位置は，左胸部第8，第11肋間腋窩中線上に5mmポートを術者用として配置し，第9肋間腋窩後線上に12mmポートを配置してカメラ用ならびにステープラ用としている．他臓器圧排用に5mmポートを第9肋間腋窩前線上に留置する場合もある（図2）．
2．胸腔内吻合
トライツ靭帯より約20cmの位置で空腸を切離後，臍部小開腹創より直視下に空腸動脈を1本切離し，挙上空腸の長さを十分に確保する．胸腔内吻合の際には，左横隔膜の切開は行っていない．食道空腸吻合は，口側食道距離によりOrVil（Medtronic 社）を用いた端側吻合（図3），またはリニアステープラ（45mm）を用いた機能的端々吻合3)を行っている（図4）．端側吻合の際には，臍部小開腹創にAlexis retractor（Applied Medical社）を装着し，サーキュラーステープラ （EEA25；Covidien）を挿入している．機能的端々吻合の場合には，左第9もしくは第8肋間ポートからリニアステープラを挿入して吻合を行っている．胸腔内吻合の際にはカメラシステムを2 台用意し，胸腔内と腹腔内の術野を同時に観察し，挙上空腸の捻れや緊張がないことを確認して吻合を行う（図5）．特に胸腔内吻合を行う際には，腸管断端の肺への癒着や瘻孔形成を予防するためにステープラ断端には埋没縫合を必ず追加することが重要である．
III．おわりに
当教室で行っている食道胃接合部癌に対するMALTAによる胸腔内吻合の手術手技につき解説した．
利益相反：なし
文献
1) Ebihara Y , Kurashima Y , Murakami S , et al.: Minimally invasive abdominal and left thoracic approach for Siewert type Ⅱ adenocarcinoma of the oesophagogastric junction Novel technique for simultaneous combined use of laparoscopy and thoracoscopy. J Minim Access Surg, 16: 285-288, 2020.
2) Sekiya S , Ebihara Y , Yamamura Y , et al.: Two emergency cases of spontaneous esophageal perforation treated using a minimally invasive abdominal and left thoracic approach. Asian J Endosc Surg, 13: 406-409, 2020.
3) Ebihara Y , Okushiba S , Kawarada Y , et al.: Outcome of functional end-to-end esophagojejunostomy in totally laparoscopic total gastrectomy. Langenbecks Arch Surg, 398: 475-479, 2013.
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