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日外会誌. 125(5): 443, 2024

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会員のための企画

「小児固形腫瘍の現在と未来」によせて

弘前大学医学部附属病院 小児外科

小林 完



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小児がんは発症頻度が低く,わが国で年間約100万件と報告されるがん患者のうち,15歳未満の患者数は約2,000例(0.2%)とされている.このうちの約2/3が白血病やリンパ腫などの血液腫瘍および脳腫瘍を占めており,残りが固形腫瘍となる.つまり小児固形腫瘍は希少でありながら,小児の病死原因としては大部分を占めている.
わが国では現在,日本小児がん研究グループ(JCCG)固形腫瘍分科会による小児固形腫瘍観察研究が実施されている.特徴として初診時・治療中・治療後のフォローアップに至るまでの臨床情報が連続して収集され,中央診断や中央診断後の余剰検体の保存と連携している点があげられる.このような登録システムは国際的にも珍しく,治療終了後の長期フォローアップのための基礎になり,さらなる臨床試験や観察研究にも役立つものと考えられる.
本企画を執筆いただいた米田光宏先生はJCCG外科療法委員会の委員長を務めておられ,本邦における小児固形腫瘍の外科治療に関するトップランナーである.本文中では米田先生の小児固形腫瘍に対する向き合い方について,御自身の若かりし頃から現在までの変遷を振り返り紹介されている.また現在の外科治療の考え方,患児の将来を見据えた治療,本邦の小児がん治療・研究体制,国際協力まで詳細に解説いただいた.特に小児がん認定外科医の重要性を強調された部分が印象的である.米田先生の座右の銘として紹介される格言は小児固形腫瘍の外科治療に携わるすべての医師の心に響くものであろう.
少子化が強調される時代ではあるが,いつの時代も「子は宝」である.われわれ小児外科医は子の未来を切り開く手伝いをする診療科であり,子の未来に使命と責任をもって治療にあたっている.本企画が会員のみなさまにとって小児固形腫瘍を取り巻く現況と展望を理解する一助となれば幸いである.

 
利益相反:なし

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