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日外会誌. 125(4): 296, 2024

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会員へのメッセージ

理事長挨拶:外科医を元気に!国民に安心を!

日本外科学会理事長,北海道大学大学院消化器外科Ⅰ 

武冨 紹信



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このたび,池田徳彦前理事長の後任として,日本外科学会第6代理事長を拝命いたしました.創立120年を超える伝統ある日本外科学会の理事長として,本邦の外科医療を取り巻く諸課題に真摯に向き合ってまいりたいと考えております.
現在の日本外科学会最大の課題は,若手医師の外科離れです.2018年から一般社団法人日本専門医機構による新しい専門医養成が始まりましたが,発足当初は基本領域総専攻医数8,410名のうち外科専攻医は805名(9.6%)で,その後一旦上昇したものの2024年は807名(8.5%)と近年減少傾向です.数字だけをみると横ばいですが,新しい医学部の発足や医学部定員数増加に伴い総専攻医数は9,454名と2018年に比べ12.4%増加しており,本来であればこの増加率を考慮すると900名を超える外科専攻医数があってもおかしくありません.おそらく皆様のご施設でも,若手外科医が減っている,新人が入ってこないことを実感されているのではないかと思います.若手医師が外科を取り巻く労働環境を敏感に嗅ぎ取り,敬遠しているのではないかと考えています.しかし,先達が作り上げ,継承されてきたわが国の外科医療を,水準を維持したまま安定的に継続していくためには人手が必要です.少なければ残された人の負担が増し疲弊してしまうという悪循環に陥ります.
それでは,具体的にどうすればよいのでしょうか.そのためにはアカデミアとして本学会が持つ理念と伝統を,時代に寄り添いながら磨き上げ,若手医師にとって魅力あるものに作り替えていかなくてはなりません.われわれが持つコア能力は,普遍的な外科医療を全国どこでも一律に提供できることです.ただし,このコア能力を時代とともに磨き続けることができなければ持続不可能に陥ってしまいます.外科医の労働環境および待遇の改善,教育体制の強化,国際化の推進,そしてSNSをはじめとした各媒体を利用した社会に向けた情報発信などを行い,日本外科学会のブランド力を強化し,若手を含めた全世代の会員にとって,さらに魅力的な学会に変貌していく必要があります.
もちろん本邦のレベルの高い外科医療を継続するため,池田徳彦前理事長をはじめ歴代理事長,理事会のみなさまが活動されるとともに,6サブスペシャルティ領域(消化器外科,心臓血管外科,呼吸器外科,小児外科,乳腺外科,内分泌外科)学会と緊密な連携を築き上げてこられました.私もこの路線を引き継ぎ,外科系学会の総力をあげて,若手医師が働きやすく学びやすい環境を,皆様方のお力を借りながら作っていきたいと考えております.
外科医が元気でなければ国民の皆様は安心して暮らせません.さらに魅力溢れる日本外科学会を構築し,会員をさらに元気にすることで国民に安全安心な医療を届けていけるよう,皆様のご協力を得ながら努力してまいります.(日本外科学会ホームページ理事長挨拶より転載)

 
利益相反:なし

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