日外会誌. 125(3): 283-289, 2024
手術のtips and pitfalls
対面式ロボット支援肺葉切除のtips and pitfalls
前方視野法によるロボット支援下肺葉切除術のtips and pitfalls
国立病院機構九州医療センター 呼吸器外科 山﨑 宏司 |
キーワード
ロボット支援下手術, 肺葉切除術
I.はじめに
ロボット支援下肺葉切除術は従来の開胸,胸腔鏡手術に比較して様々な利点を有しており1),急速な普及をみせている.当院では前方視野法によるロボット支援下肺葉切除術を独自に開発し施行してきた.本法は前胸部からカメラを挿入し,肺門の中枢血管,気管支を直視してロボット操作を行うため,中枢血管の剥離や頭側の視認性に優れている2)
3).当院では開胸,胸腔鏡,uniportal VATSで術者はすべて同様の視野で一貫した方法での手術を行っており,教育面,応用面においても有利である.
II.アプローチと手順
患者は側臥位とし術側上肢は頭側前方に挙上させ対側上肢と重ねるように固定する.腰部の屈曲は不要である.背側より垂直にロールインする.ポート位置は頭側から第2~3肋間腋窩にDa Vinciポート,第4肋間前腋窩線上にカメラ用ポート,第6肋間中腋窩線上にDa Vinciポート,を挿入する(カメラを挟んで6㎝ずつ左右にポートを配置).さらに第7~9肋間後腋窩線上にDa Vinciポート,第7~9肋間中腋窩線上に助手用ポートを挿入する.助手用ポートにはCO2送気のためのAir Seal®ポートを使用している.ロボットアームの衝突は肺尖部,横隔膜側の操作の際に生じやすいため適宜調整する.
当院ではカメラ左右のポートには右手はカディエールおよびモノポーラーシザーズを,左手はバイポーラーフェネストレイテッドを使用し,これらでほぼすべての鈍的,鋭的剥離を行っている.背側のポートからはリトラクション用のインストゥルメントを使用して術野を固定する.使い慣れたインストゥルメントを使用することを推奨する.
極めて肺門部に近接した視野であるため,肺葉の脱転を最小限とし一定の術野で手術を進めることがコツである.上葉切除では一般には葉間の剥離を先行して葉間肺動脈からの処理を行うことが多いが,本法では中枢から末梢の順に血管処理を行い血管や気管支を処理した後に葉間形成を行うFissure-last法を用いている.中枢や頭側の視認性が良いことから上縦隔郭清の操作性に優れ,血管形成や気管支形成にも適した方法であると考える.ただし欠点として俯瞰的視野を作ることが困難なため,シーリングテスト,肺葉の回収などは困難である.ロボット操作にこだわらずロールアウト後に胸腔鏡操作で行っている.
本稿では,本法の具体的なアプローチの方法と手順,コツなどをイラストで紹介する.今回はDa Vinci Siをモデルとしたが,Da Vinci Xiも同様の操作が可能である.
利益相反:なし
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