日外会誌. 125(3): 261-268, 2024
手術のtips and pitfalls
幽門側胃切除術においてBillroth-Ⅰ法が施行できないときの再建法
体腔内Billroth-Ⅱ法再建
藤田医科大学 総合消化器外科 須田 康一 , 宇山 一朗 |
キーワード
胃癌, 幽門側胃切除, 消化管再建, 腹腔鏡手術, ロボット支援手術
I.はじめに
完全腹腔鏡胃切除術は,体腔内消化管再建を伴う腹腔鏡胃切除術で,腹腔鏡補助下胃切除術と比べてさらなる創縮小効果,低侵襲性とより確実な外科的切除縁が期待できる1).当科では,1997年より腹腔鏡手術の拡大視効果に着目して早期胃癌のみならず進行胃癌も含む切除可能な全ての胃癌症例を対象として完全腹腔鏡胃切除術を行い,良好な成績を収めてきた2).2009年からロボット支援手術を導入し,da Vinci Xi サージカルシステム (Intuitive Surgical)3台体制になった2020年以降,胃癌手術症例の9割以上をロボット支援下に実施しているが,体腔内消化管再建の原理原則は腹腔鏡胃切除と変わらない.体腔内消化管再建には,迅速性,簡便性,良好な視認性,高い再現性,腸管径に依存しない吻合径など複数の利点を有することから,リニアステープラーを用いた体腔内吻合を用いている1).幽門側胃切除後,残胃や十二指腸球部が小さくB-Ⅰ再建を行えない症例では,B-Ⅱ再建を行うことが多い.特に,80歳以上の高齢者や併存疾患を有するhigh surgical risk症例に対してB-Ⅱ再建を積極的に使用している1).結腸前経路で逆蠕動風に残胃大彎と空腸腸間膜対側との側々吻合を患者右側から行うことを基本とする.縫合不全予防には,吻合部の良好な血流と全周全層性を確保することが肝要である.45mmリニアステープラーによる側々吻合を行い,吻合部が生理的な腸管軸から捻れないように注意して60mmリニアステープラーで共通口を閉鎖し,直角二等辺三角形を形成することで,25mmサーキュラーステープラーより大きな吻合口面積を確保し,吻合の再現性を向上する1).また,リニアステープラーによる吻合部では,吻合部が弛むと内腔を保持しにくいため,吻合部が弛まない程度の若干の緊張が必要となる.空腸起始部から約10cm程度肛門側の空腸腸間膜対側と残胃断端大弯側縁にエントリーホールを作成する.輸入脚症候群および挙上空腸間膜・横行結腸間膜間隙への内ヘルニア予防と輸出脚への食事通過促進を期待し,輸入脚を残胃断端に縫合糸で2~3針吊り上げ,輸入脚を十分に直線化する.腹部食道と残胃は吻合後の食事通過経路を直線化するよう横隔膜脚に縫合固定する.Braun吻合は作成していない.
本稿では,リニアステープラーを用いた直角二等辺三角形型吻合による幽門側胃切除後体腔内逆蠕動風B-Ⅱ再建の手技について概説する.
利益相反
研究費:シスメックス株式会社
奨学(奨励)寄附金:日本メドトロニック株式会社
寄付講座:シスメックス株式会社
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