日外会誌. 125(3): 260, 2024
手術のtips and pitfalls
幽門側胃切除術においてBillroth-Ⅰ法が施行できないときの再建法
「幽門側胃切除術においてBillroth-Ⅰ法が施行できないときの再建法」によせて
山梨大学 医学部第一外科 河口 賀彦 |
1881年,ウィーン大学のBillrothにより胃癌に対する幽門側胃切除術の再建法の一つであるBillroth-Ⅰ法が,はじめて成功に導かれました.その後,吻合部の緊張を軽減するためBillroth-Ⅱ法が考案され,本邦では胃癌のみならず十二指腸潰瘍などの手術においても多く施行されました.一方,1893年にRoux-en Y法が考案され,安全性や胆汁逆流などの観点から幽門側胃切除術の新たな再建法として多くの施設に普及するに至りました. 近年,胃癌に対して腹腔鏡下手術を導入する施設も増加しています.完全腹腔鏡下手術のためBillroth-Ⅰ法の体腔内吻合法も開発されましたが,Billroth-Ⅰ法は残胃にある程度の大きさが必要であり,癌の局在により残胃が小さくなった場合,施行できない場合があります.またBillroth-Ⅰ法による再建後,食道裂孔ヘルニアが悪化し,逆流性食道炎を発症することもあります.高齢化社会を背景に,胃癌手術症例の高齢化もすすんでおり,術前から食道裂孔ヘルニアを認める症例や,術前リスクを踏まえ手術時間を短縮したい症例も経験します.BillrothⅠ法による再建が施行できない場合の再建法として,多くの施設は「Billroth-Ⅱ法」や「Roux-en Y法」を選択されると思われます.腹腔鏡手術,ロボット手術などの腹腔鏡下手術が普及した現在において,これらの再建法は習得しておくべきものと考えます.本稿では,腹腔鏡下手術において数多くの「Billroth-Ⅱ法」を経験されている須田康一先生,「Roux-en Y法」を多く経験されている稲木紀幸先生に,それぞれその手技とポイントを図解にて解説いただきます.
すでに施行されている先生方も多いと思いますが,エキスパートによる腹腔鏡下手術手技のコツなどを論じていただいておりますので,今後の手術における一助になれば幸いです.
利益相反:なし
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