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日外会誌. 125(3): 251, 2024

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「わが国におけるがんゲノム医療の現在と未来―パネル検査から全ゲノム解析研究を含めて―」によせて

一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院 外科

麻賀 創太



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次世代シークエンサーをはじめとするゲノム解析技術の革新により,複数のがん遺伝子パネル検査が開発され,2019年には一部の遺伝子パネル検査が保険適応も取得し,がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院の枠組みの中で実際の症例に使用できるようになりました.行政においても2019年にがんおよび難病患者を対象とした「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」が,2022年にはさらにアップデートを加えた「全ゲノム解析等実行計画2022」が策定され,ゲノム医療の進歩を後押しする政策がとられています.その結果,現時点ですでに5万人を超える患者が,保険診療としてがん遺伝子パネル検査を受けられています.
しかしながらその一方で,私を含めた一般的な外科医にとって,ゲノム医療はまだまだ身近なものとは言いがたいのが現状ではないでしょうか.検査を依頼するタイミングの判断やインフォームド・コンセントの難しさに加え,全国どこでも容易にアクセス可能な検査ではないことや,解析できるゲノム情報の制約や治療薬の開発状況などから,検査を行っても有効な治療に結び付くのはわずか10%程度に過ぎないといった課題も指摘されています.こうした課題を解決し,がんの本体解明を進めるべく,非遺伝子コード領域も含む全ゲノム情報の解析,データベースの確立,患者還元の体制強化など様々な側面からプロジェクト研究が始まっています.
今回は,わが国有数のがん専門病院であるがん研究会有明病院でゲノム診療部医長兼乳腺内科医長としてご活躍されている深田一平先生に,ゲノム医療の現状から,全ゲノム解析の推進によってもたらされる効果や将来像まで具体例も交えつつご解説いただきました.難解に感じられる部分もあるかと思いますが,本稿が会員の先生方にとってゲノム医療の理解につながり,明日からの医療に役立てていただくことができれば幸甚に存じます.

 
利益相反:なし

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