日外会誌. 125(2): 178-182, 2024
手術のtips and pitfalls
腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡下メッシュ修復法のtips and pitfalls
IPOMによる腹腔内メッシュ挿入法
東北大学病院 総合外科 西條 文人 , 山村 明寛 |
キーワード
IPOM, メッシュ
I.はじめに
腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔内メッシュ挿入法として,2012年に保険収載された腹腔鏡を用いたIPOM(Intraperitoneal onlay mesh)法,さらにヘルニア門閉鎖を加えたIPOM-plus法が術式として広く普及した1).しかし,腹腔内に留置したメッシュの癒着による腸閉塞,Mesh bulgingや再発,trans-fascial sutureによる疼痛といった合併症が懸念される.その後,腹腔内にメッシュを露出させない方法としてRS(Rives-Stoppa), eTEP(enhanced-view totally extraperitoneal technique)-RS, (e)MILOS(Mini-or Less open sublay operation)が報告され,時代は前後するがTAR(Transversus abdominis muscle release)といった筋膜リリース法と合わせた術式の報告があり,疼痛やメッシュ露出による合併症軽減に寄与している2)
3).当院における腹壁瘢痕ヘルニアに対する手術もeTEP-RS, (e)MILOSといった腹腔内にメッシュを露出しない術式を第1選択としているが,側腹部,傍ストーマヘルニア,再発や複雑な腹壁ヘルニアに対し,IPOMの技術を必要とすることも多い.IPOM-plus法の手術手技において,腹腔内癒着剥離,正確なヘルニア門の計測,皮膚とヘルニア門の位置把握,ヘルニア門閉鎖,メッシュ展開,メッシュ固定のそれぞれにtips & pitfallsがある.ヘルニア門の計測は腹腔内で行うが,メッシュ展開,固定に至るまで,皮膚からの位置関係を把握する必要がある.IPOM-plus法では,腹腔内にメッシュを挿入する上で,メッシュがヘルニア門を確実に覆い,かつ,術後のShrinkage,ズレなどによる再発のないように展開するため,腹腔内のメッシュ展開を想定した皮膚上でのシミュレーションが重要である.位置がずれてしまうことによる再発を含めた合併症は避けなければならない.また適切なoverlapを行うための十分なマージンを確保したメッシュ選択,および癒着防止剤が破綻しないよう愛護的なメッシュの取り扱いに注意しなければならない.当院ではメッシュ固定終了後に癒着防止吸収剤をさらに追加している.
利益相反:なし
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