日外会誌. 125(2): 162, 2024
手術のtips and pitfalls
LPEC(Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure)のtips and pitfalls
「LPEC(Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure)のtips and pitfalls」によせて
順天堂大学 小児外科・小児泌尿生殖器外科 田中 圭一朗 |
LPEC(Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure)は,小児鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア修復術の一つである.針内部にループ状のワイヤーが入っている特殊な針(LPEC針)を使用して,腹腔鏡下に腹膜外でヘルニア嚢を高位結紮する手術であり,1995年に徳島大学で考案された術式である.術中の対側の検索と治療が可能となり,安全性・簡便性・手術成績も相まって,瞬く間に国内の小児鼠径ヘルニアの標準術式となった.さらにアジア中心に世界へも広がっており,日本から世界へ発信できた数少ない外科手術の一つである.考案後25年以上経過し,従来のopen法と比較して遜色ない手術であることが多施設より報告されている.また,無症状の腹膜鞘上突起の開存を閉鎖することにより,将来の対側発生を予防することも証明されている.
LPECはもともと小児鼠径ヘルニアの手術であったが,傷が小さく術後の痛みが少ない・人工物であるメッシュを使用しない・腹膜の損傷がほとんどない・手術時間が短いなどのメリットにより,近年成人の鼠径ヘルニアにも適応が拡大されてきた.成人のLPECの長期成績が報告されていないため,成人への適応に関してはまだまだ議論の余地はあるが,今後増加していくと考えられる.
今回,LPECの小児・成人それぞれの手術の第一人者に,LPECのtips and pitfallsの執筆をお願いした.詳細な図を用いて,初心者にも分かるように解説されている.日本外科学会の企画の一つとして,若手外科医やまだLPECを導入していない施設の外科医師の参考になれば幸いである.
利益相反:なし
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