日外会誌. 125(1): 83-89, 2024
手術のtips and pitfalls
小児単純先天性心疾患開心術のアプローチ法
正中小皮膚切開法
順天堂大学 心臓血管外科 中西 啓介 |
キーワード
小児心臓外科, 低侵襲手術, 小皮膚切開心臓手術
I.はじめに
外科技術の進歩に伴い,外科領域全般で手術の低侵襲化が進展している.特に心臓血管外科においても,胸腔鏡下心臓手術が一般的に行われ,ロボット支援下手術も導入されている時代である.しかし,小児心臓外科領域においては,鏡視下手術が一部導入されつつ1)も,まだまだ小皮膚切開直視下アプローチが主流となっており,このアプローチへの習熟が重要と考える.正中アプローチと側方アプローチに焦点を当て,本稿では特に正中小皮膚切開手術の工夫と注意点について述べる.
II.正中小皮膚切開手術の工夫
小児心臓外科における正中小皮膚切開手術アプローチは,各施設でさまざまな工夫が試みられている.この手術は,心房中隔欠損や心室中隔欠損など比較的単純な先天性心疾患の修復に使用され,手術成績は高い水準で維持される必要がある.ただし,多くの施設では若手の心臓血管外科医が執刀し,経験不足のために手術時間・成績に差が生じることが予想される.したがって,正中小皮膚切開手術を行う際には,安全性と確実性を確保し,手術時間の不必要な延長を避ける必要がある.
III.適応と手術方法
われわれは,正中小皮膚切開手術の適応を,皮下組織が柔軟で可動性が良い30㎏以下(9歳以下)の患児に設定している.この手術を安全かつ確実に進行するために,視野を最適に保つための工夫を行い,手術時間と手術成績における術者間の差を最小限に抑える方法を模索しながら実践している2).
IV.手術の注意点
正中小皮膚切開手術を行う際には,いくつかの注意点がある.まず,患児の年齢や体重,皮下組織の状態を適切に評価し,適切な患児に手術を施すことが重要である.また,手術においては,図に示すように操作視野を十分に露出し,無理なくどのレベルの外科医でも施行可能な手技に落とし込む必要がある.
V.まとめ
正中小皮膚切開手術は,小児心臓外科において安全性と確実性を重要視する手術アプローチの一つである.患児の適切な選定,視野の確保,手術中の注意点,そして安全性を確保するためのポイント(pit and fall)を守ることが,手術成績向上と手術時間の最適化に繋がる.今後もこの手術方法の改善と普及に向けて努力を続け,小児心臓外科領域における低侵襲手術の発展に貢献していきたい.
利益相反:なし
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