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日外会誌. 125(1): 90-93, 2024

項目選択

手術のtips and pitfalls

小児単純先天性心疾患開心術のアプローチ法

右側開胸法

岡山大学 心臓血管外科

鈴木 浩之 , 小谷 恭弘



キーワード
単純先天性心疾患, 右側開胸

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I.はじめに
小児心臓血管外科手術では通常の胸骨正中切開に加えて,侵襲度や審美的な観点からMICSが近年広く普及しており,胸骨部分切開や右側開胸でのアプローチ法が報告されている1).当院では2014年より,Right Vertical Infra-Axillary Thoracotomy Approachでの手術を積極的に行っている2).適応としてはASD,VSD,PAPVC,pAVSDなどの単純先天性心疾患,体重6kg以上で,肺疾患や右胸部の手術歴がないことを条件に症例を選択している.
体位
仰臥位・全身麻酔下にて気管挿管を行い,気管支鏡を用いて,バルーン気管支ブロッカー(20kg未満)またはダブルルーメンチューブによる片肺換気が確立されていることを確認した後に左側臥位とする(図1).第4肋間を中心として,中腋窩線上に約6cmの皮膚切開を加える.
開胸~心膜切開
皮膚切開後,広背筋・前鋸筋を温存し,第4肋間で開胸する.Wound retractor,小開胸器2個で視野を確保.肺を圧排し,壁側胸膜/心膜を露出する.横隔神経を確認し,牽引糸をかけながら心膜を切開する.送血管留置に備えて大動脈の露出・固定を行う(図2).送血管留置の際のトラブルは重大な合併症を引き起こす.この時点で視野が悪く,大動脈への安全なpurse stringの糸掛けが安全に出来ないと判断した場合は,一つ上の肋間からのアプローチもしくは大腿動脈からの送血を検討するべきである.
カニュレーション
助手に大動脈を長モスキートで把持させ,送血管およびSVCのpurse stringをかける.直視下で送血管,脱血管を挿入し,人工心肺確立後,IVCへ脱血管を追加する.基本的にはいずれも同視野・直視下で十分に行うことが出来る(図3).特に体重20kg以上で術野が深い症例の場合,カニューレホルダーの使用(図4-1)や,ドレーンホールを用いたIVCの脱血管留置等の工夫により操作が容易になる(図4-2).大動脈遮断・心筋保護液を順行性に注入し,心内操作へ移る.
心内操作
右房切開,右房壁に牽引糸をかけて展開.多くの場合は直視下での心内操作が可能である(図5図6).
視野が深い場合は,内視鏡も有用である(図7).その場合は第5肋間にカメラポートを設置し,心内操作後はドレーンホールとして使用する(図3矢印).
心内操作終了後
Head down position,心筋保護針刺入部からエアー抜きを行った後,大動脈遮断を解除する.右房切開線を閉鎖し,人工心肺から離脱する.送脱血管を抜去し,心膜は疎に単結節で閉鎖する.開胸肋間に硬膜外カテーテルを留置した後,閉胸する.
先天性心疾患手術における右側開胸法は術後早期回復,審美面から有用なアプローチである.安全性においても適切な症例選択,確立された手技・手順で行うことによって,胸骨正中切開と同等の安全性が担保でき,今後,さらに普及していくと考える.

図01図02図03図04図05図06図07

 
利益相反:なし

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文献
1) Konstantinov IE , Kotani Y , Buratto E , et al.: Minimally invasive approaches to atrial septal defect closure. JTCVS Tech, 14: 184-190, 2022.
2) Kobayashi Y , Kasahara S , Kotani Y : Right Vertical Infra-Axillary Thoracotomy Approach in Simple Congenital Heart Diseases. Oper Tech Thorac Cardiovasc Surg, 27: 294-301, 2022.

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