日外会誌. 124(2): 148, 2023
会員へのメッセージ
臨床研究推進委員会の主旨と活動内容
日本外科学会臨床研究推進委員長,藤田医科大学先端ロボット・内視鏡手術学 宇山 一朗 |
日本外科学会臨床研究推進委員会は,外科領域における適切な臨床研究を支援し,科学的根拠に基づいた外科診療の推進に資することを目的として平成17年に設置されました.本邦の臨床研究において大きな研究不正が告発され,国民の臨床研究に対する信頼の回復を図り,臨床研究の正しい推進を目的として,平成30年4月に「臨床研究法」が成立しました.その対象は,未承認・適応外の医薬品等の臨床研究,製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究, などの介入を伴う「特定臨床研究」であり,実施に際しての責任は今までの倫理指針に基づく医療機関の管理者とは異なり,研究代表医師がすべて担うことになりました.そのため,新しい臨床研究の出願数は減少しており,今後の医学の発展に大いなる懸念が生じました.よって,外科医はこの臨床研究法をよく理解した上で,academic surgeonとして臨床研究を続ける必要があります.
臨床研究推進委員会の重要な活動の一つに「日本外科学会臨床研究助成,および若手外科医のための臨床研究助成」があります.平成25年度より,AMED(日本医療研究開発機構)や厚労科研への申請に向けたパイロット試験的な研究を対象とした「日本外科学会臨床研究助成」(500万円×1件)と,小規模臨床研究あるいは基礎研究を対象とした「若手外科医のための臨床研究助成」(100万円×5件)の公募・審査・採択を行ってきました.
そして,令和4年の第122回定期学術集会(馬場秀夫前会頭)から当該会頭にもご協力いただき,成果発表,および授賞式の場として,新たに「臨床研究推進委員会企画」のセッションを設けていただき,今後も継続していく予定です.また,もう一つの重要な業務として,「臨床研究セミナー」の企画・開催があります.本セミナーは,これまで“参集形式”で春の日本外科学会定期学術集会と,秋の日本臨床外科学会総会で年2回開催していたが,コロナウイルス感染対策の観点や会員の先生方の利便性等を考慮して,令和2年よりeラーニングによる配信形式とし,年に1回,新しいeラーニングのコンテンツを作成してきました.これまでのテーマは,“臨床統計”と“臨床研究の実践”に関することや,“トピック的な内容”としてきましたが, eラーニング化の定着に伴い,そのテーマの見直しや,コンテンツ作成頻度などについて再検討した結果,“トピック的な内容”は取り止めて,“臨床研究のための統計解析”のような外科医として臨床研究を行ううえで必要な基本的な事項を学んでいただくようなコンテンツを,5年に一度の頻度でリニューアルしていきます.さらに,日本外科学会が所管するNCDデータ以外の領域にまたがる研究を行おうとする場合には,個別に該当する学会への承諾を得た上で,主たる学会からNCDに申請する必要があり,手続きに煩雑な点があったことから,複数領域にまたがるNCDデータの利用において,円滑な協議に資するため,学会間の交渉機関として,平成28年に「NCD臨床研究推進委員会」を立ち上げ,本会が窓口を務めています.
以上,臨床研究推進委員会の目的,活動内容をご紹介しました.今後も会員の皆様の臨床研究推進を手助けできるよう活動していく所存です.
利益相反:なし
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