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日外会誌. 123(6): 577-580, 2022

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手術のtips and pitfalls

直腸癌局所再発巣のR0切除を行うための工夫

国立がん研究センター東病院 大腸外科

塚田 祐一郎 , 伊藤 雅昭



キーワード
直腸癌, 局所再発, 骨盤内再発, R0切除, 化学放射線療法

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I.はじめに
直腸癌術後の局所再発は比較的頻度の高い再発形式である.切除可能な直腸癌局所再発に対する第一選択は手術であり,R0切除によって根治が期待できる.しかし,直腸癌局所再発に対する手術は高度な侵襲を伴う高難易度手術であり,術後のQOL低下をもたらすため,緻密な治療計画の策定および経験豊富な外科医による執刀が必要である.また,直腸癌局所再発に対する重粒子線治療の良好な成績が報告されてきており,重要な治療選択肢の一つである1)

II.術前の手術計画の策定
R0切除のために最も大切なことは術前の手術計画である.MRIなどの画像検査で再発巣の範囲を同定し,R0切除が達成可能な切除ラインを計画する.再発巣は画像所見以上に周囲に浸潤していることもあるため,初発直腸癌の手術時よりも広めの切除ラインを計画する必要がある.切除ラインは再発巣からの距離を目安に設定するのではなく,外側のランドマークとなる構造物(血管・筋肉・骨・神経)を露出することでその中に再発巣が含まれるように設定する.R0切除可能な直腸癌局所再発に対する術前化学放射線療法の意義は確立されておらず,現在JCOG1801試験にて検証中である2)

III.術中の注意点
手術の際にまず遭遇するのは腹腔内の癒着である.癒着剥離には細心の注意を払い,腸管の損傷部分は丁寧に修復することが術後の小腸瘻予防に非常に重要である.尿管の同定も初回手術の影響で難しいことが多く,われわれの施設では麻酔導入後に尿管ステントを挿入している.手術の手順は,安全・初回手術で剥離されていない・途中で切除不能と判断されても手術を中断できる,といったことを考慮して決定する.特に内腸骨静脈からの出血は止血に難渋することがあるため,この部分の操作はある程度他の部分の操作が完了してから行う.内腸骨静脈からの出血のマネージメントは局所再発の手術を行う上で非常に重要である.止血法として,縫合結紮・電気メスのソフト凝固・止血剤による圧迫などがあるが,出血した際にまずはガーゼ圧迫などで出血を制御することが大切である.強すぎる圧迫や出血点が不明のままの止血操作は静脈壁を裂き出血点を更に広げてしまうので行ってはならない.出血点近傍に坐骨神経などの神経が走行している際は,これらの神経に針糸をかけないように留意し神経の熱損傷も極力おこさないように心がける.

IV.おわりに
安全な手術を常に心がけながら,術前に計画した切除ラインを遵守することが,R0切除を達成するためには肝要である.

 
利益相反:なし

図1図2図3図4図5

図01図02図03図04図05

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文献
1) Yamada S, Kamada T, Ebner DK, et al.: Carbon-Ion Radiation Therapy for Pelvic Recurrence of Rectal Cancer. J Radiat Oncol Biol Phys, 96: 93-101, 2016.
2) Kadota T, Tsukada Y, Ito M, et al.: A phase Ⅲrandomized controlled trial comparing surgery plus adjuvant chemotherapy with preoperative chemoradiotherapy followed by surgery plus adjuvant chemotherapy for locally recurrent rectal cancer:Japan Clinical Oncology Group study JCOG1801 (RC-SURVIVE study). Jpn J Clin Oncol, 50: 953-957, 2020.

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