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日外会誌. 123(6): 568, 2022

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会員のための企画

「医療の質・安全の向上と無過失補償の取り組み」によせて

大分赤十字病院 乳腺外科

武内 秀也



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医療事故をめぐる訴訟は,2004年の1,110件をピークとしてその後は減少傾向ではありますが,現在でも1年間に約800件の医療事故が提訴され,医療者関係者と患者・家族の双方が苦しんでいる現状があります.これに対して,本会においても訴訟対策WGにおいて可能な対応について議論が行われました.
医療行為において,医師の過失の有無を問わずに患者に補償する無過失補償制度が,2009年に重度の脳性麻痺に対する産科無過失補償制度として初めて導入されました.本制度は,原因分析・再発防止と無過失補償の二つの柱からなる制度であり,周産期医療者関係者に加え,患者団体の代表者や一般の有識者を委員として運営されています.事業開始後10年以上が経過し,補償対象となる重症脳性麻痺の件数は減少傾向で,産婦人科関連の裁判の件数も低下しました.この無過失補償制度の対象範囲をどのように外科医療の領域に拡大していくかという議論は重要であり,先述したWGでも産科医療補償制度が取り上げられました.
本企画の執筆をお願いしました九州大学病院医療安全管理部の後教授は,制度の運営主体である日本医療機能評価機構において,産科無過失補償制度の創設に携わり現在でも運営を担当されています.また本会でも訴訟対策WGに委員として参加されて,同WGでは外科医療で生じるトラブル事例について原因分析・再発防止の仕組みを構築し,無過失補償を行うことで紛争解決を図ることを検討されました.さらに,九州大学の外科系教室での合併症カンファ等にも参加されて,臨床の最前線で起きているインシデントの原因分析・改善策の立案にも取り組んでおられます.そこで今回,後教授に,「医療の質・安全の向上と無過失補償の取り組み」について執筆をお願いしました.医療安全の理解が浸透し,外科医が安心して医療を行える環境整備に大きく寄与すると確信しています.

 
利益相反:なし

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