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日外会誌. 123(3): 220, 2022

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特集

本邦の大腸癌治療の現状と展望-海外における標準治療と比較して

1.特集によせて

防衛医科大学 校外科学講座

上野 秀樹



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最新がん統計によると,日本人が最も多く罹患する悪性腫瘍は大腸癌である.
大腸癌の治療成績向上のために高質な周術期管理や原発巣・転移巣に対する過不足のない外科治療が重要であることは論を俟たず,薬物療法や放射線療法を併用する新規治療法の開発にも期待が高まっている.「大腸癌取扱い規約」と「大腸癌治療ガイドライン」という二つの臨床実践の柱を有する本邦では,これらを基盤とする独自性の高い外科治療が大腸癌に対する標準治療として発展・定着してきた.大腸癌治癒切除後の補助化学療法や切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物治療の領域においては欧米のガイドラインの影響が大きく,国内ガイドラインもこの動向と軌を一にするかのごとく記載内容の改訂が行われることが多いが,このような状況とは対照的と言えるかもしれない.
本企画では海外との比較を基軸として,本邦における大腸癌の外科治療の独自性と課題を整理し,今後の展望を理解することを目的とした.大腸癌の周術期管理や標準術式に関して構築されたエビデンスの整理を嚆矢とし,直腸癌に対する新規手術術式や直腸温存治療の功罪,局所制御に関わる成績向上の試みといった,近年国内外で議論の多い領域に焦点をあてた.さらに,適応基準や術式選択,外科医の手術技術が患者の転帰を大きく左右する病態の代表格である局所再発と多発肝転移に対する治療戦略を取り上げた.
執筆は各領域において第一線で活躍され,海外の動向にも精通されている先生方にご依頼した.本邦と海外の大腸癌治療を俯瞰する視点から,本邦の標準治療の特徴と課題,今後期待されるエビデンス構築の展望について,読者の皆様にご理解を深めていただく機会となれば望外の喜びである.

 
利益相反:なし

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