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日外会誌. 122(2): 221-223, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第120回日本外科学会定期学術集会

特別企画(5)「地域を守り,地域で生きる外科医たちの思い」 
5.沖縄県外科医療プロジェクトが切り拓く夢と希望に満ち溢れた沖縄県の明るい未来を創る

那覇西クリニック 乳腺科

玉城 研太朗

(2020年8月14日受付)



キーワード
沖縄県, 外科医療プロジェクト, 沖縄メディカルアイランド構想

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I.はじめに
沖縄県は南北400キロメートル東西1,000キロメートルに渡る広大なエリアを有する島国で,観光客の皆様にとっては様々な自然や文化あるいは食事をエンジョイできる,この広大なエリアは大変魅力的かもしれないが,医療にとってはこの広大なエリアがデメリットになることもしばしばである.加えて,治療に難渋するような疾病があった場合に近隣の大都市で治療を,とは容易に言えず,例えば福岡でも飛行機で一時間半,東京,大阪も二時間以上かかるため,沖縄県の医療は可能な限り沖縄県内で完結しないといけない.外科医療もまたしかりで,少ない外科医療資源の中で,沖縄県の隅々までいきわたるような(可能な限りの)医療の均てん化も重要であり,そのためには今後外科医の充足も喫緊の課題である.

II.沖縄県の現状と対策
沖縄県では徐々に外科医が減少してきており,加えて実際に執刀をする医師も徐々に減少してきている.図1をご覧いただきたいが,平成24年の沖縄県外科会の会員数は247名であったが徐々に徐々に減少しており,平成30年には188名でそのうち執刀をしていない先生が44人で実質144名の外科医で140万沖縄県民を支えていることになる.このまま減少し続けると沖縄県における外科医療崩壊を招くことになりかねない.2019年6月に沖縄県外科医対策委員会を立ち上げた.メンバーは沖縄県外科会会長,琉球大学病院長,初代沖縄県知事政策参与,沖縄県医師会常任理事,沖縄県若手外科医二名に加え,沖縄県行政より保健医療部長と医療統括官で構成され,当方が事務局長を拝命した.まず行わないといけないこととして,沖縄県における外科医が不足している原因,外科医が増えないことへの解析を行う必要があり,アンケート調査を行うことにした.医学生向け,初期研修医向け,外科専攻医向け,中堅以上の外科医向けのアンケートを作成予定だが,現在はCOVID-19対策の影響で一時中断している.
会議の中で,沖縄県の外科医療改革の短期→中長期Project(案)を策定した(図2).まず短期Projectとしては先述の「アンケート調査」と「沖縄県の外科医療に対する解析」を行うことに加えて,「外科医療の魅力の発信と勧誘」を医学生あるいは初期研修医に発信することを行うこととした.具体的には外科医療の魅力を伝える大学生向けの講義を企画すること.メスでしか救えない命,外科救急の魅力などを若い世代に伝える講義を行うのだが,医者の話はおうおうにして面白くないことが多く,若い世代が外科医療に「ワクワク」して頂けるような発信の仕方も講じていこうと考えている.もう一つは外科医になってどのような外科人生を送ることができるのか,ただただ仕事に忙殺されているのが外科医,というイメージを払拭すべく,外科医療のキャリアプランをみせることも大事だと考えている.また目指すべく外科医像は多様であることも重要で,キャリアプランのdiversityと更には女性外科医のキャリアプラン,人生プランにおける外科医療といった観点でも若い世代に発信をしていこうと考えている.
さて中期Projectとしてはまず「沖縄県の外科医療の独自性」を創るProjectである.沖縄県は第二次世界大戦後より救急医療に特に力を入れてきており,外科救急もまた得意分野の一つである.沖縄県の外科救急を体系化し,沖縄県外科医療の魅力の一つとして県内外あるいは国外に発信をして世界中から沖縄県に外科救急を学びに来るくらいのものを作ろうと考えている.また働き方改革も重要で,ここだけにfocusをあて対策を講じてもうまくいかないので,沖縄県全体の医療体制にメスを入れて改革を行いながら,外科医の働き方改革,外科医療のタスクシフトも含めてシステムの構築を行っていこうと思う.
長期Projectとしては,沖縄県の医療体制全体の改革にもなるのだが,沖縄県中部宜野湾市の西普天間地区に琉球大学医学部移転も含めた,Asia最大の医科学研究エリア,最先端医療エリアの「Okinawa Medical Island」Projectを計画しており,ここでAsia最先端の外科医療が受けられるセンター,そして外科学研究が行えるようインフラの整備を考えている(図3).

図01図02図03

III.おわりに
沖縄県における外科医療の発展のために短期,中期,長期のProjectを外科医のみならず,行政や政治を含めた業界横断的なProjectとして進めていきたいと思う.

 
利益相反:なし

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