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日外会誌. 122(2): 132, 2021

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会員へのメッセージ

国際委員会委員長5年の軌跡

日本外科学会国際委員長,東京慈恵会医科大学外科学講座・血管外科 

大木 隆生



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私は2016年5月に故・渡邉聡明前委員長(名誉理事長)から国際委員会委員長職を引き継ぎ,今年で満5年となります.私は2020年4月の定時社員総会で第123回日本外科学会定期学術集会の会頭に選出していただきましたので,今期で理事を退任し,次々期会頭となります.従いまして,国際委員会委員長も辞任する運びとなります.会頭選挙に際してご支援いただいたことと同時に,過去5年間に渡り国際委員会の目的と事業をご理解いただき,また多大なご協力をいただきましたことにこの場を借りて感謝申し上げます.ありがとうございました.
さて,この5年間を振り返りますと,まず就任当初に立てた目標は従来型の短期・単発の交流ばかりではなく,一層の国際化を目指して長期の交流ができる仕組みを作ることでした.そのために5年間でウガンダ,インドを含む6か国に計12回出張しました.海外への研究を主とした留学は盛んですが,近年,現地医師免許やビザ取得などのハードルから臨床留学はほとんどされていません.そこで,本会会員が海外で長期にわたり臨床に従事することを支援するシステムの構築を模索しました.考慮したのは本会と会員の外国語事情を考慮して英語圏での臨床研修であるべきという事,そして,できれば有給であるという事です.そこで,英国外科学会(RCS;Royal College of Surgeon)とこうした条件で臨床留学をする機会を探ったところInternational Surgical Training Programme(ISTP)制度の存在を知り現地視察をしました.本制度は英国による国際的支援の一環として英国外科の若手外科医師が,英国各地の病院の外科各サブスペシャルティ診療科で1~2年間,registrar(後期研修医)として有給で勤務することができる制度です.本会の医師を派遣するには本会がRCSのpartner institutionに認定される必要がありましたので申請し認定されました.そしてRCSとの交渉により最大4名まで本会から受け入れてくれることになりました.その後,公募・選考プロセスを経て4名を選考しRCSに推薦しました.次いで行われたRCSとのインタビューを経て,田村亮会員が首尾よく英国Newcastle医科大学付属病院に採用され,無事2年間の研修を修了しました.本人の期待以上の手術経験と異文化交流ができたとの事,嬉しく思います.その後も本会内での選考は順調に進みましたが,RCSの採用基準である語学テストのハードルが高い事や,COVID-19パンデミックによる国際交流が停止している事もあり,2期生の渡英が足踏み状態にあります.こうした長期臨床留学を通じて得られる人脈や識見は何物にも代えがたいですので,年月を重ねてISTP留学生が増える事で真の意味での国際交流が深化することが期待されます.
また,従来からの欧米のACS,GSS,ASC,BJSとの交流に加えて森正樹理事長の命で,インドとアフリカに広げる事にしました.そして一昨年からはAssociation for surgeons of India(ASI)とThe College of Surgeons of East & Central and Southern Africa(COSECSA)との交流が本格化し嬉しく思います.
学会の国際化は現代社会においては好き嫌いにかかわらず推し進めなくてはならない事です.国際委員会では海野副委員長と湊谷副委員長,並びに委員の皆さまと協力し,今後も様々なプラットフォームを提供しますが,それを活かすのは会員の皆さまの積極参加ですのでこうした機会を是非ご活用し,学会の国際化にご協力ください.

 
利益相反:なし

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