日外会誌. 121(6): 629, 2020
手術のtips and pitfalls
「ロボット支援下胸腔鏡下食道癌手術」によせて
東海大学 消化器外科 小柳 和夫 |
ロボット支援下胸腔鏡下食道癌手術は,2018年度の診療報酬改定により保険収載され,本邦での手術件数も急速に増加しています.ロボット支援下手術の特徴は,3Dモニターによる立体視認性の向上のほかに,手振れ防止機能と多関節機能があげられ,術者の鉗子操作性の改善により,精巧な手術が可能となります.食道癌手術においては重要臓器の損傷により重篤な合併症をきたすことがありますが,ロボット支援下手術では術中,術後の合併症の軽減が期待され,すでに術後の反回神経麻痺軽減の報告もされています.縫合結紮操作も従来の胸腔鏡下手術よりはるかにスムーズで,術者のエルゴノミクスも向上することが期待されます.
一方で,ロボット支援下食道癌手術は,未だにその黎明期にあり,術式の定型化にはもうしばらく時間が必要です.また,これからロボット支援下食道癌手術を導入する施設では,十分なシミュレーションのうえ,事故のないように安全な臨床導入を心がけていただきたいと思います.
現在(2020年6月時点),ロボット支援下手術においてはda Vinci Surgical Systemが用いられていますが,複数の機種があり,それぞれ若干の違いがあります.今後,新たな機種が導入されることも予想されます.鉗子やエネルギーデバイスも随時改良されていますので,術者や施設の特徴に応じて選択していく必要があります.また,胸腔鏡下食道癌手術は腹臥位という独特の進化を遂げ,従来の側臥位とあわせて,ロボット支援下食道癌手術においても,それぞれの利点と欠点を理解することは重要です.
今号の「手術のtips and pitfalls」では,ロボット支援下胸腔鏡下食道癌手術の理論と実践に関して,臨床経験が豊富なお二人の先生に執筆をお願いしました.本術式の総論とともに,須田康一先生には「腹臥位の立場」から,本山悟先生には「側臥位の立場」から,それぞれ,手術のtips and pitfallsを解説していただき,「今後」も展望していただきたいと思います.
利益相反:なし
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