日外会誌. 121(6): 620, 2020
会員のための企画
「『with コロナ時代』の医療機関経営について」によせて
防衛医科大学 校外科学講座 神藤 英二 |
近年,急速に進行する高齢化・食生活の変貌により疾病構造が変化し,医療受給側の需要に変化が生じている.また,医療提供側も,新規治療法開発などにより提供する医療サービスが日々変化している.需要と供給が合致した際に医療サービスが提供でき,その差益により医療経営が成り立つことから,経営に当たっては,蓄積されたデータから今後の方向性を予測,医療を提供する体制を先取りする姿勢が求められる.
しかし,先般の新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ事象により,状況は一変した.概して,消費者に対して直接モノやサービスを提供する業種では,消費者の外出控えによりその接点が絶たれ,売り上げが激減している.対面でのサービス提供が基本となる医療分野でも患者数が減少し,医療機関の経営に大打撃を与えた.安心安全な接点づくりというこれまでにない課題を突き付けられ,電話やビデオ通話アプリの利用などを試みる施設も多い.
今回,外科医として活躍されるとともに,九州大学大学院にて経営学についての研鑽を積まれた山口圭三先生に,コロナ発生後の医療環境の変化について情報収集をいただき,医療経済の現在地および今後の展望についてご執筆いただくようお願いした.「withコロナ時代」における医療サービス提供の在り方の議論は感染症専門医などの一部の医師に主導され,未だ十分になされたとは言い難い.また,メスで直接的に医療にあたる外科医にとり,リモート的医療はやや縁遠く感じられるのも事実である.しかしコロナ後の大きな潮流の中で今後を見据え,対応策を講じる必要があろう.本企画が困難に直面しつつも最前線で実臨床にあたられる先生方にとって,打開策を見出す手掛かりになれば幸いである.
利益相反:なし
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