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日外会誌. 127(2): 198-205, 2026
特集
ICI時代の外科治療
8.ICI時代の乳癌外科治療
内容要旨
免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の登場により,乳癌治療は新たな局面を迎えている.従来,乳癌は免疫原性の低い腫瘍とされ,免疫療法の有効性は限定的と考えられてきたが,トリプルネガティブ乳癌(triple-negative breast cancer:TNBC)では腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocytes:TILs)の多寡や腫瘍変異負荷(tumor mutational burden:TMB)の高さから,ICI感受性が高いことが示されている.KEYNOTE-522試験で,術前化学療法における pembrolizumab 併用が病理学的完全奏効率とイベントフリー生存を有意に改善し,周術期でのICI有効性が確立された.現在,ICIはTNBCを中心とした乳癌治療における重要な選択肢として位置づけられ,外科治療戦略の再構築が求められている.
一方で,免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)による臓器障害や周術期管理,他治療法との併用戦略など臨床的課題も多い.irAEは早期発見と対応が不可欠であり,多職種連携のもとで安全な周術期管理を行うことが重要である.外科医は内科医・麻酔科医・病理医と協働し,治療全体を統合的にマネジメントする能力が求められる.
さらに,PD-L1発現,TILs,TMBなど複合的免疫バイオマーカーを統合した個別化治療戦略の確立が重要であり,外科的切除標本から得られる病理情報はその基盤を支える.ICI時代の乳癌外科治療は,免疫腫瘍学的知見と集学的治療を融合した新たなパラダイムへと進化しつつあり,今後の臨床試験および基礎研究の成果を通じて,より安全で効果的な治療体系の構築と予後改善が期待される.
キーワード
免疫チェックポイント阻害薬, トリプルネガティブ乳癌, 病理学的完全奏効, 免疫関連有害事象, 周術期管理
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