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日外会誌. 126(5): 414-419, 2025


特集

医療機器開発と医工連携

2.医療機器開発と医工連携における知的財産管理の基礎

神戸大学大学院医学研究科 医療創成工学専攻

和田 則仁

内容要旨
近年,医療現場では高度かつ安全な医療提供のため,革新的な医療機器の開発が急務となっており,医療と工学の専門知が融合する「医工連携」の重要性が高まっている.特に外科領域では,手術支援ロボットやAI画像解析など,現場のニーズに根差した先端技術が登場しており,医工連携が革新の原動力となっている.一方で,知的財産の取り扱いが不明確なまま共同開発を進めると,成果の商業化が頓挫するなど重大なリスクも伴う.医療従事者も開発過程に深く関与する中,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権といった知的財産権の基礎知識は不可欠である.加えて,職務発明制度の理解と運用,企業との契約による権利帰属の明確化も重要となる.知的財産は,研究成果の保護だけでなく,開発資金の回収,競争力の確保,ライセンスによる収益化など多面的な機能を果たす.特に医療機器開発では,安全性評価や規制対応と連動した戦略的な知財管理が求められる.また,共同研究においては,秘密保持契約(NDA)や契約書による取り決めが,連携の円滑化と成果の社会実装を支える鍵となる.開発の各段階—アイデア創出,研究開発,製品化,臨床応用—において,知的財産を適切に管理することは,開発成功の基盤であり,持続的な医療技術革新の実現に不可欠である.

キーワード
オープンイノベーション, 特許権, 共同研究, 職務発明, 秘密保持契約


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