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日外会誌. 126(3): 233-239, 2025


特集

進行胃癌治療の現状

2.術後障害対策における術式選択

静岡県立静岡がんセンター 胃外科

寺島 雅典 , 松本 陽介

内容要旨
近年,胃癌に対する薬物療法の進歩は目覚ましいものがあるが,進行胃癌に対して確実に治癒を得られる治療法は依然として外科的な手術療法である.しかしながら,胃癌の術後には胃切除術後障害として何らかの後遺障害が生じることは避けられない.胃切除術後障害には,ダンピング症候群,小胃症状,下痢,消化吸収障害などの機能的障害と,逆流性食道炎,吻合部狭窄,イレウスなどの器質的障害がある.機能的障害は,胃切除と再建術式によってその程度の多寡が規定されてしまうが,器質的障害は手術時の工夫によってある程度回避する事が可能である.
胃切除範囲を縮小し,術後機能を温存しようとする術式として,幽門保存胃切除,噴門側胃切除,胃亜全摘などが挙げられるが,進行胃癌に対する適応は慎重になされるべきである.一方で,幽門保存胃切除後の胃内容鬱滞や,噴門側胃切除後の逆流性食道炎,吻合部狭窄など,これら術式に特有の術後障害があるので,その予防には充分に配慮する必要がある.空腸パウチによる代用胃を作成し,機能温存を試みる手術も一部の施設で導入されているが,術後体重減少の予防やQOL等における明確な有用性は前向きのランダム化比較試験では示されていない.
現時点で,進行胃癌に対して術後障害を予防できる術式は存在しないが,様々な術式の工夫により術後障害を軽減できる可能性はある.術後障害の評価法を含めて今後の更なる研究の発展に期待したい.

キーワード
胃切除術後障害, 機能温存手術, 幽門保存胃切除, 噴門側胃切除, 空腸パウチ再建


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