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日外会誌. 123(3): 221-227, 2022


特集

本邦の大腸癌治療の現状と展望―海外における標準治療と比較して

2.大腸癌の周術期管理―エビデンスはどこまで構築されたか―

三重大学大学院医学系研究科 臨床医学系講座消化管・小児外科学

問山 裕二 , 藤川 裕之 , 今岡 裕基 , 志村 匡信 , 川村 幹雄 , 大北 喜基

内容要旨
大腸癌手術における周術期管理は手術部位感染(surgical site infection:SSI)と縫合不全対策が最も重要な課題である.SSIの予防には予防的抗菌薬を使用することはコンセンサスが得られており,抗菌薬選択や適正な投与期間において新たな知見が報告されてきている.また大腸手術に特徴的な腸管前処置においても,SSI抑制に対する経口抗菌薬併用の有効性が示されてきている.一方,直腸癌手術におけるSSIと縫合不全予防に対する骨盤内ドレーン留置は否定的な意見が多いが,本邦では経肛門的ドレーンの使用が増えてきており,その有効性について報告が増えてきている.閉塞性大腸癌に対する術前マネジメントの一つである大腸ステントは,その後に続く手術の消化管吻合率の増加,術後合併症の減少に寄与する一方,消化管穿孔による腫瘍学的予後の悪化が懸念されていたが,その功罪についても新たなエビデンスが報告されてきている.近年,新たなSSI予防法として創部への局所陰圧療法(negative pressure wound therapy:NPWT)が注目されている.本稿では,大腸癌手術におけるSSIと縫合不全の予防に対する周術期管理を中心に,これまでに構築されたエビデンスを解説する.

キーワード
大腸癌, 周術期管理, 手術部位感染, 縫合不全


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