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日外会誌. 123(1): 25-31, 2022


特集

Modern Surgeon-Scientistによる恒常性維持器官の外科研究

4.難治がん術後長期生存を目指した個別化がん免疫療法の開発

国立がん研究センター 先端医療開発センター免疫療法開発分野

中面 哲也

内容要旨
glypican-3(GPC3)ペプチドワクチン療法は,肝細胞がん,肝芽腫等を対象とした臨床試験において,投与した80%の患者の末梢血中あるいはがん局所に,ペプチド特異的に反応するキラーT細胞(CTL)が検出できることを証明しており,がん細胞が1千億個~1兆個以上の進行がんでも頻度は5%未満と低いが腫瘍縮小効果を示すことがあり,根治的術後のがん細胞が10億個(画像診断で診断可能な1cmのがん)未満の場合は再発を抑える効果も高そうである.GPC3を発現する肝細胞がんの術後の8年生存率はわずか20%程度なのに対して,術後GPC3ペプチドワクチン療法投与群は約60%であり,さらには,再発寛解を繰り返した難治性肝芽腫5人の患児は,GPC3ペプチドワクチン療法のみで全員6年以上無再発(おそらく完全治癒)を達成している.がん遺伝子変異に由来するネオアンチゲンを標的とした個別化がんワクチンも期待されているが,がん共通抗原のレパートリーを増やしていき,ネオアンチゲンも合わせた個別化がん再発予防ワクチン療法を開発することで,難治がんであっても,根治的切除後の個別化ワクチンにより再発しにくくし,再発した場合は同時に開発している個別化T細胞療法でがんを根絶する戦略で,難治がん予後の大幅な改善を実現し,将来的には,難治がんが,リンパ節廓清不要の手術と個別化免疫療法の併用で根治できる時代を目指したい.

キーワード
個別化ワクチン療法, キラーT細胞(CTL), 個別化T細胞療法, 難治がん, 根治


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