[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (2849KB) [全文PDFのみ会員限定]

日外会誌. 121(6): 606-612, 2020


特集

ECMO,補助循環装置の進歩

7.新しい経皮循環補助装置―心内留置型カテーテルポンプ―

大阪大学 心臓血管外科

戸田 宏一 , 澤 芳樹

内容要旨
薬物療法抵抗性の心原性ショックに対しては,IABPやPCPS等の経皮補助循環装置が用いられてきたが,既存の補助循環装置では血行動態の改善と心筋の負荷軽減を同時に,且つ低侵襲に行うことは難しく,それらを実現できるデバイスとして左心室から大動脈へ直接血液を送り出す経皮的左心補助人工心臓Impellaが開発された.Impellaはカテーテルの先端に小型の軸流ポンプが付いており,大腿動脈,腋窩動脈または直接大動脈から挿入し大動脈弁を跨ぐように留置し,左室から脱血し上行大動脈に送血でき,経皮的LVADと言える.欧米で10万例を越える症例に用いられ,本邦でも2017年10月より心原性ショックに対して保険適応となった.われわれの施設でのImpella 5.0の補助期間は平均17±8日で,挿入後の心拍出量は平均5.8±1.1L/minと十分な循環補助ができ,肺水腫-臓器不全からの回復を認めた.2020年5月の時点で177施設が補助人工心臓治療関連学会協議会インペラ部会によってインペラ認定施設として認定され,1,800例を越える症例に使われ離脱生存率も78%と高い.特に補助効果の高いImpella 5.0の装着・管理における心臓血管外科医の役割は大きく,手技や管理方法に精通することにより重症心不全急性増悪,急性心筋梗塞,劇症型心筋炎,開心術後に伴う心原性ショック症例の救命に寄与することが期待される.

キーワード
心原性ショック, Impella, 補助循環


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。