[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (681KB) [会員限定]

日外会誌. 120(6): 646-651, 2019


特集

外科医とがん登録―NCDから見えてきたわが国のがん治療の実態―

4.食道がん登録

日本食道学会全国登録委員会委員長,川崎幸病院がん治療センター長 

日月 裕司

内容要旨
National Clinical Database(NCD)データでは食道切除術の術後死亡率は,日本外科学会認定施設は2.52%,日本消化器外科学会認定施設は2.57%,日本食道学会認定施設は1.87%であった.手術死亡率は食道外科専門医がいる施設がいない施設より有意に低かった.食道切除術の手術死亡率は年間手術数が10例未満の施設が,30例以上の施設の3倍以上であった.内視鏡手術(MIE)の割合は2016年が49.0%で経年的に増加していた.MIEは開胸手術に比べ術後合併症が少なかったが,30日以内の再手術が多かった.手術死亡率はMIEでは開胸手術より有意に低く,MIEは開胸手術に置き換わりうる手術と結論された.
食道癌全国登録は1976年に開始された.全国登録データを用いて鎖骨上リンパ節を領域リンパ節とするようにTNMに提案してきた.全国登録のデータを用いて治療効果インデックス(EI)を計算し,取扱い規約第11版ではリンパ節群分類の改訂を行った.集学的治療の発展に伴い登録項目の改定を行い,化学放射線療法,放射線単独療法の進行度毎の生存曲線が報告可能となった.食道癌登録は2019年からNCDに移行した.手術症例の登録数が増えるとともに,術前因子や合併症,MIEと長期予後との関係の解析が可能となる.一方,放射線治療医,腫瘍内科医,内視鏡治療医に対して,NCDでの非手術例の登録を呼びかけていく必要がある.

キーワード
食道がん, がん登録, リスク因子, 予後因子


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。