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日外会誌. 120(3): 290-296, 2019


特集

外傷外科を取り巻く最新のトピックス

4.ハイブリッドER

大阪急性期・総合医療センター 救急診療科

藤見 聡 , 山川 一馬 , 渡邊 篤

内容要旨
外傷診療はCT検査の登場によって,手術を開始する時点で予め出血源が同定された状態で止血処置に臨むことが可能となり,治療成績が格段に向上した.一方で止血処置まで一刻一秒を争う最重症の出血性ショック患者では,そのCT検査室への移動自体が命取りとなり『CTは死のトンネル』と言われ,最重症症例はCT検査の恩恵を受けることができなかった.
2011年救急領域では世界で初めて大阪急性期・総合医療センター救急外来初療室(以下,初療室)にIVR-CTが導入された.これにより患者の移動なしに初期治療,CT検査,動脈塞栓術,ダメージコントロール手術が可能となった.診断と治療という異なる作業が同時に行えるという意味から,この初療室はハイブリッドERと呼ばれている.その後の臨床研究により初療室の一つの形としてハイブリッドERが日本で認知されている.
2018年11月現在,日本の11施設にハイブリッドERが導入されている.ハイブリッドERで診療を行うメディカルスタッフは,従来の外傷診療とは異なる対応が求められており,それらを克服するために様々な取り組みが行われている.近い将来ハイブリッドERが日本型の救急外傷診療の核になることが期待されている.

キーワード
救急外来初療室, CTは死のトンネル, Hybrid ER System, 日本型救急外傷医


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