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日外会誌. 120(3): 282-289, 2019


特集

外傷外科を取り巻く最新のトピックス

3.REBOA(Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta)

1) 山梨県立中央病院 救命救急センター
2) 東京医科歯科大学 救急災害医学

井上 潤一1) , 大友 康裕2)

内容要旨
蘇生的大動脈遮断バルーン(resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta:REBOA)は大動脈内に挿入したバルーンを膨らませ中枢側からの血流を制御することで血圧の維持と出血量の軽減をはかるデバイスである.出血性ショックを伴う体幹外傷へのダメージコントロール戦略の一環として,手術や経カテーテル治療の術前,術中での使用が急速に広まりつつある.同様の作用をもつ蘇生的開胸・胸部大動脈遮断にくらべ低侵襲で調節性を有し血液曝露のリスクも低減される.わが国ではIABO(intra-aortic balloon occlusion)の名称で1990年代後半から使用されてきた.一般的な適応は重篤なショック状態にある横隔膜以下の部位(腹腔内,骨盤領域を含む後腹膜,四肢)からの大量出血であり,心停止の回避を目的とする.大腿動脈に経皮的または直視下にカテーテルを挿入し出血源に応じた部位でバルーンを膨らませる.15分以上の遮断で臓器虚血,再灌流障害,下肢虚血等の合併症が増加する.現在7Fr細径のデバイスが市販されており,適応が予想される場合は早期に大腿動脈シースを確保しておく.遮断時間を少しでも短くするよう必ず迅速な根治的止血術を前提に用い,見かけ上の血圧上昇から不要なCT検査を行うなど治療のスピードを緩めてはならない.REBOAを使用する施設は術者の適切なトレーニングとその効果を最大限発揮できる外傷診療体制を整備することが必要である.REBOA使用例の症例登録を行うとともに,適応,有用性,安全性に関するエビデンスの蓄積が期待される.

キーワード
REBOA, IABO, 大動脈内遮断バルーン, 蘇生的開胸, ダメージコントロール


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