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日外会誌. 119(2): 180-185, 2018


特集

外科診療における遺伝学的検査の意義

7.肝胆膵

京都大学医学研究科 外科学講座肝胆膵・移植外科分野

増井 俊彦 , 高折 恭一 , 岡島 英明 , 穴澤 貴行 , 上本 伸二

内容要旨
近年のゲノムシークエンス技術の急速な進歩により,様々な癌の遺伝子変異が明らかになってきた.しかしながら膵癌においては,親子または兄弟姉妹に2人以上の膵癌患者のいる家族性膵癌家系での遺伝子変異が未だ20%以下しか明らかになっておらず,日本膵臓学会家族性膵癌登録制度(略称JFPCR:愛称Family Pac Study)によるデータ集積の意義が増している.また,これらの登録を通してスクリーニング間隔,スクリーニング開始年齢などに対するエビデンス構築が予定されている.一方,膵NETでは浸透率の高さから家族性発症と遺伝性NETはほぼ同一のカテゴリーで有り,散発性と比して異なる外科的治療をとる必要があることが明らかとなってきた.さらに,小児の遺伝性疾患には唯一の外科的根本治療となり得る肝移植が適応となる疾患が有り,Biliary Atresia(胆道閉鎖症,BA)は本邦の肝移植の50%を占めている.その他,単一遺伝子変異疾患であるAlagille症候群,Progressive familial intrahepatic cholestasis(PFIC),Wilson病やCrigler-Najjar症候群,尿素サイクル障害等に肝移植が行われ,良好な成績が報告されているが,肝移植の予後は併存疾患によるところも大きく,その適切なアセスメントが重要である.

キーワード
家族性膵癌, 遺伝性膵NET, 肝移植


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