[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (824KB) [会員限定]

日外会誌. 119(2): 172-179, 2018


特集

外科診療における遺伝学的検査の意義

6.消化管

九州大学病院別府病院 外科

伊藤 修平 , 三森 功士

内容要旨
癌は環境因子やDNA複製エラーにより蓄積された遺伝子変異が原因であるが,生まれながらに生殖細胞系列に遺伝子変異を有している家系では,発癌の原因の多くを遺伝因子が占めている.遺伝性消化管腫瘍症候群とは,消化管に多発癌,重複癌を認め,遺伝子異常により異なる表現型を呈する遺伝性疾患であり,家系内における関連腫瘍発症の集中,若年発症,同時性,異時性の多発癌や重複癌,疾患ごとに特徴的な随伴病変など散発性腫瘍とは異なる特徴を持つ.遺伝性消化管腫瘍症候群の患者は,若年齢で癌を発症するため,遺伝学的検査や遺伝カウンセリング,疾患ごとの適切なサーベイランスを行うことで,癌の早期診断,早期治療,さらには患者のQOL向上,予後向上が期待できるが,日本では,発癌に対する診療体制,患者支援体制は依然として十分ではない.また,日本では,腫瘍内科医,消化器内科医とともに消化器外科医が遺伝性消化管腫瘍症候群の可能性のある患者に接する機会が多く,日常臨床でこれらの疾患を疑う知識が必要であり,疑わしい場合は専門家へのコンサルテーションを考慮する必要がある.研究面では,次世代シークエンサーが実用化され,遺伝子解析技術が飛躍的に進歩しており,新たな原因遺伝子や病的変異の同定が期待される.臨床面では,医学的,心理学的,倫理学的な問題を考慮し,今後さらなる体制の整備が必要不可欠である.

キーワード
遺伝性消化管腫瘍症候群, 遺伝学的検査, 遺伝カウンセリング, 遺伝性腫瘍, 遺伝性大腸癌診療ガイドライン


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。