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日外会誌. 118(6): 610-615, 2017


特集

分子標的療法は外科治療をどう変えるか

2.甲状腺癌

1) 筑波大学 医学医療系乳腺内分泌外科
2) 筑波大学附属病院 乳腺甲状腺内分泌外科

原 尚人1) , 河村 千登星2) , 藤原 沙織2) , 安藤 有佳里2) , 松尾 知平2) , 髙木 理央2) , 星 葵2) , 佐々木 啓太2) , 澤 文2) , 橋本 幸枝2) , 寺崎 梓2) , 岡崎 舞2) , 田地 佳那2) , 市岡 恵美香2) , 都島 由希子1) , 井口 研子1) , 坂東 裕子1)

内容要旨
今まで化学療法感受性の低かった甲状腺癌に対して2014年春より分子標的薬の使用が可能となった.甲状腺癌の大部分を占める分化癌に対しては,根治切除不能で放射性ヨウ素内用療法抵抗性,なおかつ急速な進行性のものに限って使用できる.さらに根治切除不能の未分化癌と髄様癌に対しても使用できる薬剤が出現した.
しかし,分子標的薬の使用においては,重篤な有害事象がしばしば出現し,また患者のQOL(Quality of Life)を著しく損ねることもある.この治療法のリスクベネフィットを十分考慮したうえで,他のあらゆる治療法でコントロール不能の際のみに使用すべきである.
現時点においていかなる組織型においても甲状腺癌治療の第一選択は外科的治療であり,分子標的薬が外科的治療にとって代わるものではなく,外科医は従来通りあらゆる切除方法を試みるべきである.また術前治療や術後補助療法での分子標的薬の使用は確立されておらず,今後の臨床研究に期待するが現在は厳に使用を慎むべきである.

キーワード
甲状腺分化癌, 甲状腺未分化癌, 甲状腺髄様癌, 分子標的薬, 放射性ヨウ素内用療法


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