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日外会誌. 117(6): 483-490, 2016


特集

乳癌診療の現況からみた将来

2.画像診断の進歩

昭和大学病院 乳腺外科

明石 定子

内容要旨
マンモグラフィは高濃度乳房において乳癌検出感度が低いことが指摘されている.米国では,乳腺濃度を受診者に伝え,追加検査を受ける必要があることを知らせることを法律化する州が増えているなど,高濃度乳房の場合の対策が重要となっている.高濃度乳房への対策として,インパクトのある研究結果やいくつかの新たな画像診断機器が登場してきたので紹介する.昨年わが国から高濃度乳房の多い40歳代女性においてマンモグラフィに超音波を追加することで乳癌の検出率が高くなることを示したランダム化試験(J-START)の結果が報告され,話題を巻き起こした.超音波検査が検査者の技能に依存すること,再現性の問題を解決する方策として乳房自動超音波診断装置(automated breast ultrasongraphy:ABUS)の検討も進んでいる.トモシンセシス(digital breast tomosynthesis:DBT)は感度だけでなく,特異度も向上することから要精検率を低下させるメリットがある.造影マンモグラフィは遺伝性乳癌卵巣癌症候群などの乳癌罹患高リスク女性の検診・良悪性の鑑別を要する石灰化に対する針生検適応決定など造影乳房MRIにとって代わる検査として有用である.乳房専用PETは全身PETとの併用で保険収載されており,全身PETで検出できない小乳癌の検出に有用であり,今後術前薬物療法の効果予測などにも期待される.現時点ではいずれのモダリティもマンモグラフィ単独と比較し,乳癌検出率を向上させることは示されているが,乳癌死の低下に関するデータはなく,今後の検討が期待される.

キーワード
高濃度乳房, breast density notification law, 超音波検診, 造影マンモグラフィ, 乳房PET


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