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日外会誌. 116(4): 254-259, 2015


特集

外科周術期管理の最前線―術後回復力強化プログラム―

7.早期離床とリハビリテーション

1) 登米市立登米市民病院 外科
2) 岩手県立中央病院 消化器外科
3) 東北大学大学院 先進外科学分野

加藤 貴志1) , 宮田 剛2) , 亀井 尚3)

I.内容要旨
術後回復力強化プログラムの中で,早期離床を促す周術期リハビリテーションは中心的対策であるが,生体代謝機能に及ぼす影響を検討した報告は少ない.そこで身体的侵襲の大きい食道癌手術において周術期のリハビリテーション強化が,蛋白代謝や水分代謝に与える影響を調べるためにリハビリテーション施行群(n=38)とリハビリテーションを特にしなかった従来管理の対照群(n=41)とを比較し,その代謝面での効果を検討した.
術後の自発的離床を待つだけの対照群に比較し,術前から理学療法士が介入して積極的にストレッチ運動,レジスタンス運動,有酸素運動等を負荷し,手術直後からベッドサイドでの立位,足踏みなどのリハビリテーションを取り入れることで,既報のごとく呼吸機能に与える好影響に加えて窒素出納が早期に陽転化し,水分出納も早期に正常化した.また術後約1週間後に肝逸脱酵素の上昇がみられていた対照群に比し,リハビリテーション群ではこの上昇が抑制され,総リンパ球数の低下も軽度で回復も早期化していた.
早期離床は,これまで代謝面での効果が明確ではなかったが,今回の検討で蛋白代謝や水分代謝面での有用性が明らかとなった.これらの効果の生体内メカニズムが更に解明されることで,他への応用が期待される.

キーワード
術後回復促進, 窒素出納, 水分出納, 免疫能回復


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