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日外会誌. 112(3): 164-169, 2011


特集

膵癌診療の現況と課題

3SMA合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術

金沢大学 消化器·乳腺·移植再生外科

北川 裕久 , 太田 哲生 , 田島 秀浩 , 中川原 寿俊 , 牧野 勇 , 高村 博之 , 谷 卓 , 萱原 正都

I.内容要旨
2002年から膵頭部癌に対して,上腸間膜動脈(SMA)と周囲のリンパ系·神経叢を膵頭とともに一括切除する“augmented regional pancreatoduodenectomy(ARPD)”を17例に行ってきた.この手術は,resectabilityではなくcurabilityの向上を目指した術式である.膵頭からのリンパ系·神経系が集約する十二指腸水平脚下縁レベルまでの小腸間膜根部,いわゆるmesopancreas1) をSMAを含めて,膵頭とともにin situで遊離し,循環遮断下で摘出するno-touch isolationが特徴である.術後5年以上生存は3例にみられている.ARPDはリスクを伴う手術であるため,その適応がポイントである.腹側膵領域の膵頭部癌で,神経叢浸潤が膵頭神経叢を越えてSMA神経叢にまで及び,SMA神経叢全周郭清のみでは十分なsurgical marginが得られない症例が良い適応であるが,SMA神経叢が全周性に浸潤を受けている場合やN3転移が疑われる場合などは,この術式の適応外と考えている.年齢は,男性は65歳以下,女性は70歳以下が妥当である.動脈再建を行うことから,もちろん動脈硬化など血管病変を十分評価しておく必要がある.SMAは小腸の動脈血流を担っている非常に大切な動脈であり,一旦トラブルが起きると致死的となる可能性が高い.従って,従来の手術療法を含めた各種治療の成績と,ARPDの利点·リスク等を十分患者サイドに情報提供して十分に話し合いを持ち,慎重に適応を決定すべきである.

キーワード
膵頭部癌, 根治手術, SMA合併切除, 手術適応


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