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日外会誌. 112(1): 32-37, 2011


特集

大動脈瘤治療のup to date

3.ステントグラフト治療 c)腹部大動脈瘤

三重大学病院 血管内治療センター

加藤 憲幸 , 井内 幹人 , 茅野 修二

I.内容要旨
平成18年に腹部大動脈瘤治療用のデバイスが厚生労働省の承認を得て以来,腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(Endovascular Aneurysm Repair,以下EVARと略す)は,本邦においても急速に普及している.現在年間3,000例以上のEVARが施行されており,近い将来には4,000例を超えると予想されている.EVARが本格的に導入される前の平成18年における人工血管置換術が年間約8,000例であったことより,今後は腹部大動脈瘤症例の半数以上がEVARで治療されることになる.50年以上の間,人工血管置換術が標準的治療であり続けた腹部大動脈瘤に対する治療戦略における,まさにパラダイム·シフトが訪れたのである.
日本のEVARは,ステントグラフト実施基準管理委員会が,実施施設,実施医の基準について,厳格な管理を行っている.このため,現在の実施施設数は200を超えているが,これまでのEVARの成績は,欧米に比べてきわめて良好なものとなっている.
開腹を必要としないEVARは,いわゆるハイリスク症例の治療を可能とした.これにより,EVAR登場以前であれば,経過観察が選択されたような症例も治療の恩恵に与れるようになった.超高齢社会に入り,ハイリスク症例が増加している日本では,腹部大動脈瘤の症例数自体の増加に加えて,治療選択におけるEVARの割合が増加し,手術数自体も今後ますます増加するものと考えられる.

キーワード
腹部大動脈瘤, ステントグラフト, 血管内治療


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