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日外会誌. 112(1): 26-31, 2011


特集

大動脈瘤治療のup to date

3.ステントグラフト治療 b)胸腹部大動脈瘤―手術不能の胸腹部大動脈瘤治療に対する枝付きステントグラフト術―

東京慈恵会医科大学 外科学講座血管外科学分野

大木 隆生

I.内容要旨
慈恵医大では胸腹部大動脈瘤(TAAA)に対して従来の開胸開腹人工血管置換術に加えて枝付きステントグラフト(SG)とHybrid手術を用いた治療を行ってきたので,その手技と結果について報告する.
過去3年間に121例のTAAAを治療した.人工血管置換術(Open)が43例,開腹し腹部分枝を再建した後にステントグラフト(SG)を留置するHybrid手術が9例,開胸も開腹もしない枝付きSG術50例であった.心疾患(Open 25% vs枝付きSG 46%)COPD(5 vs 21%)と枝付きSG群で有意に併存疾患が多いにも拘わらず,手術死亡(5 vs 2%)は低かった.対麻痺発生率(2.6 vs 1.7%)は枝付きSGで有意に低かった.動脈瘤径(65 vs 65mm),平均年齢(vs 75歳)平均手術時間(395.6 vs 366.2分)は両群で有意差は認めなかった.枝付きSGで6例(9.6%)に追加処置が必要であったがいずれも局所麻酔下のステント追加のみであった.3つの治療法を合わせた手術死亡率と対麻痺発生率は各々4.9%と1.9%と満足のいくものであった.
手術不能症例に対する枝つきSGの初期成績は非常に良好であった.また,ハイリスク症例を枝付きSGで治療しているおかげで人工血管置換術の成績も満足できるものとなった.両者の中間に位置する症例にはHybrid手術が適切である.このように治療選択肢が広がることによりTAAA治療成績全体が向上することが期待される.

キーワード
thoracoabdomminal aneurysms, branched stentgraft, EVAR, Fenestrated stentgraft


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