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日外会誌. 111(4): 241-245, 2010


外科学会会員のための企画

性同一性障害(gender identity disorder)の外科治療

女性から男性への手術(FtM)

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科形成再建外科

難波 祐三郎

I.内容要旨
性同一性障害(Gender Identity Disorder:GID)のうち女性から男性への性転換症(Female to Male Transsexual:FTMTS)に対する性別適合手術(Sex Reassignment Surgery:SRS)には乳房切除術,子宮卵巣摘出術,尿道延長術,陰茎再建術が含まれる.このうち子宮卵巣摘出術は婦人科が担当する.乳房切除術では皮下乳腺摘出術に加えて,余剰皮膚切除,乳輪乳頭縮小術および位置移動を行い,できるだけ男性型胸郭に近づける.尿道延長術では立位排尿を目的とした陰核陰茎形成術と2期的な陰茎再建を前提とした尿道延長術がある.陰茎再建においては前腕皮弁を用いる方法が一般的である.しかしAllenテスト陰性例や前腕からの皮弁採取を拒否する症例では前腕以外からの皮弁の組み合わせによる陰茎再建を行う.陰茎再建において重要な点は,(1)主な手術は一期的に行われること,(2)再建された陰茎は整容的に容認できるもので,性交に耐えうる周径と長さを有すること,(3)再建陰茎は触覚と性的知覚を有すること,(4)尿道は再建陰茎の先端まで延びており,立位にての排尿が可能であること,(5)性交用の勃起プロテーゼを永続的に埋入できることなどである.現在国内でGIDに対するSRSを行っている施設は非常に限られており,患者の多くがタイなどの外国で手術を受けているのが現状である.

キーワード
性同一性障害, 性別適合手術, 乳房切除術, 尿道延長術, 陰茎再建術


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